七五三で子どもに陣羽織を着せたい!羽織の代わりに着せても大丈夫?
七五三の5歳の祝い着といえば一般的によく目にするのが羽織袴姿です。しかし羽織の代わりに陣羽織を着せても問題はないのでしょうが。男の子の初節句に陣羽織を着せて写真を撮るという話はよく聞きますが七五三ではどうなのでしょう。ここでは陣羽織について詳しく解説します。
そもそも陣羽織とは
近年、ゲームやアニメ、テレビ番組でも戦国ものを取り上げたものが増えているので、戦国武将が身に付けている陣羽織の姿を目にすることがあるのではないでしょうか。陣羽織は、室町時代から安土桃山時代の戦国時代に生まれた武将が甲冑の上に着ていたベストのようなものです。はじめは袖付きでしたが、戦場で動きやすいよう次第に袖なしになりました。当時は具足羽織や陣胴服といっていました。
陣羽織の目的
陣羽織のおもな目的は、甲冑の保護と雨や防寒対策です。それから、一目で大将を識別する目的もありました。そのため、それぞれの武将が、陣羽織の背中に家紋などの象徴的な印を付け個性的なものにしていました。また、高価な材料でオリジナルの陣羽織を作っていたので、財力やカリスマ性を誇示するものでもありました。
陣羽織は贈答品としても使用された
陣羽織はとても高価であったため、贈答品としても使われました。たとえば、豊臣秀吉が毛利輝元をはじめ諸大名を味方に引き入れるために陣羽織を贈ったといわれとぃます。
陣羽織のかたち
安土桃山時代は、ポルトガルなどから鉄砲やキリスト教をはじめ、さまざまな西洋文化が伝わりました。雨の日に着る合羽もそのひとつです。陣羽織のかたちは、ポルトガルから伝わった合羽の形と和服が融合してできたものという説もあります。
また、ポルトガルの宣教師がもたらしたマントも陣羽織の原型ともいわれています。織田信長はイエズス会の宣教師から譲りうけたマントを気に入って着ていたという記録があります。陣羽織は、軍を統率する武将らしく派手で豪華なものが多く、丈の長さや襟のかたちなどにも個性がでています。戦がなくなった江戸時代は、実用性より装飾性の強い陣羽織になっていきました。幕末になると、再び実用性が伴った陣羽織になります。
陣羽織によく使われている文様
陣羽織の文様に使用されたものは、戦で使用するものなので、勝利をイメージする縁起のよい吉祥文様や花鳥文様が主に使われています。また、東南アジアを経由して入ってきた更紗も人気でした。
陣羽織に使われた縁起のよい吉祥文様
寒さの厳しい冬でも生命力がある松竹梅や、めでたいことの前兆とされる瑞雲文様、長寿の象徴の鶴亀など縁起がよい文様が使われました。
陣羽織に使われた菊牡丹文様
長寿の象徴の花とされる菊や百花の王といわれる牡丹は、丸く小さな蕾から大輪の花を咲かせることから成功につながる縁起のよい花として陣羽織に使用されました。
南蛮貿易によってもたらされた文様
南蛮貿易によってもたらされたイスラム文化由来の幾何学模様や更紗模様は、とても人気があり、多くの武将が陣羽織に使用しました。同じく東南アジア経由で入ってきたペルシャ絨毯には、獅子が獲物に襲いかかるペルシャの伝統的な文様が描かれていました。それを陣羽織に取り入れた豊臣秀吉の陣羽織は有名です。南蛮文化による文様は、それまで日本になかった文様なので新鮮に感じたことでしょう。
陣羽織に使用された素材
ポルトガルなどの南蛮貿易で日本に入ってきた羅紗という織物が、おもに陣羽織に使用されていました。羅紗は毛織物の一種で、フェルトのように圧力をかけて作られるもので、保温性に優れていました。そのほか、鳥の羽やビロード、緞子なども使用されていました。いずれも高価なものです。
戦国武将が着ていた陣羽織
織田信長の陣羽織は、揚羽蝶紋黒鳥毛陣羽織が有名です。揚羽蝶の家紋を黒鳥の羽毛に埋め込んであらわしています。豊臣秀吉の陣羽織は、蜻蛉燕文様陣羽織があります。金の布地につばめと二の丸が描かれています。山形文様陣羽織は、伊達政宗のもので、黒の羅紗地を金銀の縁取りをして、裾を緋羅紗で山形の文様が表してあります。鍾馗陣羽織は、前田利家のもので、橙色の絹地で前は菊の花、後ろは鍾馗が描かれています。
七五三に陣羽織を着せても問題ない
七五三の5歳の祝い着は、羽織袴姿が多いと思いますが、関東では陣羽織姿というのはあまり見かけません。
5歳は袴着の祝い
七五三の5歳の祝いは、生まれて初めて袴を付けて成長を祝う袴着の儀がはじまりです。氏神様に、袴を着られるまで育ったことの感謝と報告、そしてこれからの健やかな成長を祈ります。医学が未熟で栄養状態もよくなかった昔は、子どもがなかなか育たなかったため、袴が着られるまで育つのもたいへんでした。
5歳の祝いは、袴着に儀ですから、袴を着た晴れ着ならば陣羽織でも裃でも大丈夫でしょう。地方によっては、羽織袴姿よりも陣羽織の方が多いというところもあるようです。大切なのは、昔も今も、子どもの健やかな成長を願う気持ちではないでしょうか。
まとめ
七五三の5歳の祝い着は、羽織袴姿がもっとも多く見られますが、地域によっては陣羽織を着るのが一般的に行われるところもあります。5歳は袴着の祝いが始まりですから、袴に陣羽織でもまったく問題ありません。しかし、着物ではなく、洋装でお参りに行く場合もあるでしょう。いずれも、子どもの健やかな成長を願う気持ちはいずれも一緒でしょう。