椿文様は梅文様と同ように縁起のよい柄!着用するときのポイントは?
椿文様は華々しく大胆なデザインが多く「映えのある場」にぴったりです。ときには縁起が悪いといわれて敬遠されることもありますが、日本文化では長らく「椿は縁起のよい植物」として親しまれてきました。着付け教室でも評判の柄で、椿文様を着こなせるとバリエーションが増えます。ここでは椿文様にについてご紹介しましょう。
そもそも椿は春を告げる花
椿といえば、雪が積もる庭や公園で咲く姿がよく見られます。そのため、冬の花と考えられていますが、日本文化では「春を告げる花」なのです。旧暦では2月4日より「立春」とされ、本格的に春の季節になるから。2月上旬はまだまだ寒い時期ですが、太陽は日々力強さを増し、日差しに春を感じさせます。
椿は霊木といわれ、縁起のよさが愛される
椿はガクごと花を落とすので、武士の社会では「首が落ちる=縁起が悪い」といわれていたのは事実です。しかし、これは武士の間だけの考え方で、日本では長い間、縁起がよい花とされていました。椿は常緑樹という種類の木で、冬でも葉を落としません。
これが霊力を宿す木と考えられ、古代からさまざまな伝説が残っているのです。日本書紀ではときの天皇が軍の兵士に椿の木槌を与え、土蜘蛛(天皇に従わない氏族)を倒した伝説が残っています。椿の鑑賞が好まれるのは鎌倉時代からで、江戸時代の園芸文化でも椿は大人気。多くの品種が生まれたのもこの時期です。
寒い時期に咲く椿は「鳥媒花」
なぜ椿はこんなに寒い時期に花を咲かせるのでしょうか。椿は「鳥媒花」といい、野鳥に受粉を手伝わせるためです。多くの花は昆虫に受粉を手伝させる「虫媒花」。しかし、日本の気候では冬には昆虫がほとんど隠れるため、受粉を手伝ってくれません。野鳥にとっても冬はエサの虫が少なく、木の実を食べ尽くしている厳しい時期なので、好んで蜜を食べます。
椿の蜜をなめるのはメジロ、ヒヨドリが主な鳥ですが、とくにメジロは集団で椿の木に集まり、花弁に捕まり蜜を舐めるのです。メジロが舐めた後の椿は爪痕で痛んでしまうので、すぐに見分けがつくでしょう。赤い椿に黄緑色のメジロは配色がよく、帯留めにメジロのモチーフを入れると見栄えがします。
椿文様のバリエーションが多様
椿文様は種類が豊富で、デザインさえ選べばどんな人でも合わせられます。ただし、人気の「大柄の椿花」文様は長身の女性向けで、意外と着こなすのは難しい文様です。自分にはどんな柄が合うのか、具体的には着付け教室などで確認しましょう。ここでは椿文様の代表的な柄を紹介します。
雪待ち椿
椿の花に雪が積もった文様です。赤い椿に白い雪はとてもよく映えます。着物の文様では、12月から翌2月までに使うのが一般的です。
枝椿
椿の花と枝をモチーフにした文様です。椿はほかの花と異なり、花と枝が付いた文様が数多くあります。写実的なデザインから単純化した単色まで、バリエーションは無数です。写実的な枝椿の帯は、初釜など新春のイベントにぴったり。着物では難しい大柄の椿でも、帯なら多くの女性に似合います。
遠州椿
江戸時代の大名茶人、小堀遠州が好んだ文様です。寛永文化の基礎を築いた遠州は茶道に関わるすべてに精通し、水琴窟(すいきんくつ・水を落として音を鳴らす庭園装置)など多くの発明を行いました。遠州椿の椿は極限までデフォルメされ、蝶が2頭並んでいるようにも見えます。遠州椿は一見すると椿に見えない文様ですが「分かる人ならすぐ分かる」専門性、さりげなく椿をあしらう粋な心が映えるでしょう。
アールヌーヴォー風
明治から昭和初期ごろまでは日本でもアールヌーヴォーが流行し、着物柄にも取り入れられました。アールヌーヴォー風の椿は単色で大胆にデフォルメされ、色次第では着る人を選びません。誰でも合わせやすい文様を選ぶなら、落ち着いた色合いがおすすめです。
椿文様の着物は卒業シーズンに最適
椿文様は卒業式の着物にも最適です。「少し遅いのでは?」と心配される方もいますが、卒業式の袴や着物でも椿柄は人気のデザインです。
大胆な椿文様は、長身の女性向け
大きな椿文様は華々しいため、着物の柄として合わせるのはコツがいります。よくカタログで見かける華々しい大柄な椿模様の着物は、長身の女性向けです。長身なら椿の強さに負けないインパクトがあり、うまく調和ができるでしょう。
逆に背が低い女性だと椿柄が前面に出てしまい、ご本人のよさが引き出しにくいといわれています。背が低い女性が椿柄を着たいときは、落ち着いた色合いにする、遠州椿など極度にデフォルメされた椿柄にするなど、工夫をすれば問題ありません。
袴なら身長に関係なく合わせられる
袴なら、身長にかかわらず多くの女性でも似合います。袴は上下がセパレートで、下の袴は単色です。全身が柄物でないため、椿のような大胆なデザインでもうまく調和でき、だれでも映えるでしょう。卒業式なら「椿+梅」「椿+菊」など、複数の花をあしらった文様も人気です。
まとめ
椿文様は梅文様と同じ吉兆文様で、めでたい席に着るのに最適です。ただし、人気の大胆な椿文様の着物は誰でも似合うとは限りません。長身長の方以外は藍色、単色など落ち着いた色合いにする、着物ではなく帯に椿を使うなど工夫をすると調和がとれます。椿は人気の柄ですがクセがあるので、着付け教室などで学んでから着るのがより無難でしょう。冬と春の代名詞といえる椿柄はぜひ積極的に付けたい文様です。