小千谷縮着物は夏にピッタリな着物!着こなし方やお手入れ方法をご紹介
夏の暑い日に街を歩いていると、とても涼やかな印象の着物美人に出会います。淡色の単衣着物をさらりと着たその人は下界の熱を感じないかのように、軽やかに人混みに消えていくのです。彼女の着物は小千谷縮。新潟が世界に誇る夏着物であり、すべての着物好きの憧れです。ここでは小千谷縮の着こなし方やお手入れ方法について解説します。
小千谷縮着物とは
小千谷縮とは新潟県小千谷市を産地とする麻織物です。小千谷縮で作られた着物は肌にまとわりつかず、夏場でもさらりとした着心地が実感できます。
小千谷縮の歴史
小千谷縮は奈良時代から皇室に献上されていた越後上布が原型になっているようです。江戸時代、寛文年間に明石の浪人、堀将俊が妻子と共に越後国山谷村、現在の小千谷市に移住しました。堀は絹を素材にした明石縮の製法を麻素材である越後上布に取り入れ、改良に成功します。越後上布から越後縮と呼ばれるものが生み出され、やがて小千谷縮となったようです。
堀が村人に織り方を惜しみなく伝授したおかげで、縮は小千谷の貴重な収入源となりました。高品質な織物として珍重され、諸大名への献上品となります。右肩上がりに生産されますが、余りの高品質のため、幕府から贅沢品とされ、天保の改革では禁令の対象となってしまいます。しかし小千谷の人々は一命を賭して縮織を守りました。縮織を減らし、絹織物が奨励されると小千谷の民は暴動を起こして抵抗したのです。
そして明治4年、小千谷縮はオーストリアで開催された万国博覧会に出品されます。ラミー糸、苧麻の使用により、小千谷縮はより涼しく繊細な、美しい織物に進化しました。昭和30年には国指定重要無形文化財となり、昭和50年には伝統的工芸品として国の指定を受けます。平成21年、小千谷縮、越後上布の製造技術はともにユネスコの無形文化遺産に登録されました。
小千谷縮の特徴
小千谷縮は着物に仕立てると、ほかに類を見ない清涼感を体感できます。夏の着物は暑い、との固定概念は小千谷縮には通用しません。小千谷縮の清涼感の秘密は、布地の表面にある独特のシボ、凸凹にあります。シボは強い撚りをかけた縮織特有の現象で、肌と布地の間に微細な空間を作るのです。
水分を発散し、乾燥しやすい麻の素材を用いることで、着物の清涼感をさらに高めています。日本は高温多湿の国、越後内陸はその傾向がとくに強い地域でした。湿気の多い越後の夏を涼しく過ごすため、改良を繰り返し、作り上げられた着物が小千谷縮です。平織のものを越後上布、縮織のものを小千谷縮と呼んでいます。
小千谷縮、独特の製法
小千谷縮の原料である苧麻は主に福島県で生産されているようです。苧麻を刈り取り、水の中で皮をむき、繊維を取り出します。繊維は純白で輝くように美しく、絹糸の輝きと遜色ありません。強い撚りをかけた糸を経糸にして織り上げると、縮のシボが生まれるのです。
織りあがった布地はお湯の中で手もみし、凸凹を出します。この作業は縮独特の作業のようです。湯もみのあとは雪晒しにします。真冬の天気のよい日に、大きく広げて外気に晒し、天然のオゾンによる低温漂白するのです。雪の平原の上に、布地を広げる雪晒しは、小千谷縮と越後上布の仕上げにしか見られない光景で、雪国越後の風物詩となっています。
小千谷縮着物の着こなし方
小千谷縮は6月から9月まで着られる着物ですが、3通りの着こなし方があります。6、7月は単衣着物として、8月は浴衣として、小物を秋物にすれば9月にも着られる便利な着物です。さらりとした涼感が特徴の小千谷縮はぜひ浴衣として着用したいものですね。夏向けに淡い色に染めたものが多く、素材の白さが夜の眼にも鮮やかに映ります。
絽や紗の帯もよいですが、とくにおすすめしたいのは大人用の兵児帯です。兵児帯のふんわり感と小千谷縮のシボが実にしっくりと合います。浴衣風ではなく、夏着物として着たい人は長襦袢を着て、半襟をきちんと見せましょう。絽の帯にガラスなど透明感のある帯留を合わせるとおしゃれです。
9月に入れば、帯締め、帯留は秋物に変えてください。まだ暑い時期なので長襦袢はそのまま夏物にして、半襟だけ秋物に変えてもいいでしょう。小千谷縮は繊細な薄物で、かなり透け感があります。長襦袢のしわに注意し、下着が見えないよう工夫して着てください。
小千谷縮着物のお手入れ方法
小千谷縮は自宅で洗濯できます。とくに夏場に浴衣として直接肌に触れたものはすぐに洗濯して、汗じみを防ぎましょう。衿は皮脂汚れやファンデーションが着きやすい部分です。中性洗剤をしみこませてください。軽く畳んでネットに入れ、洗濯機のおしゃれ着洗いモードで洗います。脱水は短めにして、室内干しにしてください。手洗いの方が布地にダメージがありませんが、自信がない人はクリーニング店にお任せしましょう。
まとめ
小千谷縮は新潟県小千谷市を産地とする、麻織物です。さらりとした清涼感があり、独特のシボがあるのが特徴です。素材に麻を使った着物は通気性に優れ、吸湿性も高く、高温多湿な日本の夏には最適な着物といえます。浴衣、夏着物、単衣着物として、3通りの着こなしで楽しんでください。自宅の洗濯機のおしゃれ着洗いで洗濯できます。