繊細かつ美しい十日町明石ちぢみ!豪雪地帯で生まれた織物の魅力を解説
今回の記事では、十日町明石ちぢみという日本の伝統工芸品を紹介します。伝統工芸品というと、古めかしく、現代では着用できてない印象かもしれません。しかし十日町明石ちぢみは、今の時代にもフィットする洗練された反物です。この記事を読めば、その特徴や歴史、魅力を理解できます。それでは紹介していきましょう。
繊細な薄物の十日町明石ちぢみとは
十日町明石ちぢみは、新潟県の十日町市を中心に今も生産が続けられる反物です。十日町明石ちぢみの糸の原料は繭です。繭の先端部分には汚れが混じっていることが多いです。十日町明石ちぢみは、強撚糸といって、糸を強くねじる独特の技法を駆使することによって生産されています。こうして糸を強くねじると、繭の先端にある汚れや不純物はより目立つようになります。
しかし十町明石ちぢみの大きな特徴は、素材を贅沢に使用することで生まれる贅沢な手触りです。この贅沢な手触りは、先端にある汚れをさけ、中央部分だけを使用しているからこそで実現できているものといっても過言ではないでしょう。
そのほかの特徴としては、薄物であるということがあげられます。職人の熟練した手作業により、夏の暑さが厳しい季節でも、肌にべたつかず、涼しげでさわやかな印象を与えることができる反物になっています。余談にはなりますが、十日町明石ちぢみの肌触りのよさは、それを表現する民謡があるほどです。それは十日町小唄という民謡ですが、その曲の歌詞に「着たら離せぬ味のよさ」という、十日町明石ちぢみの肌触りのよさを表すフレーズがあります。
豪雪地帯だからこそ生まれた十日町明石ちぢみの歴史
続いてこの章では、十日町明石ちぢみが生産されてきた歴史を紹介します。元々新潟県の十日町市周辺は、十日町明石ちぢみが生産されるずっと前から、製糸業で栄えていました。それを象徴するかのように、江戸時代には、新潟県の越後ちぢみが武士の制服として選ばれました。
その後の1800年代の後半に、十日町明石ちぢみは、京都で生産されていた名産品である西陣の夏反物からインスピレーションを受け生産が開始されたといわれています。十日町明石ちぢみの生産を大きく助けたのが、それ以前から生産されていた十日町透綾という織物です。十日町透綾を研究し、改良を重ねていくことで、十日町明石ちぢみを生産するために必要な、緯糸に強い撚りをかけていく技術が完成に近づいてきました。
こうした研究の末、十日町明石ちぢみは明治時代の中ごろに一つの産業として製造されるようになり、販売も行われるようになりました。また1982年には、十日町明石ちぢみは、経済産業大臣指定の、国の伝統工芸品に選ばれました。こうした経緯もあり、十日町明石ちぢみは、日本が誇る伝統工芸品として、今も大切にその技術が受け継がれていっています。
十日町明石ちぢみは着心地のよさが魅力
最後の章では、十日町明石ちぢみの魅力をいくつか紹介します。やはり十日町明石ちぢみの最大の魅力は、絹織物ならではの、抜群の肌触りのよさでしょう。最高の肌触りのよさが生む、十日町明石ちぢみの抜群の着心地は、大正や昭和の時代を生きた数々の女性を虜にしました。多くの女性が、十日町明石ちぢみの着物を一度着用しただけで、ファンになりました。
また十日町明石ちぢみは、幻の「蝉の翅」と呼ばれてもいます。幻の蝉の翅と呼ばれる理由は、その独特の透け感です。この透けすぎない絶妙な透け感も、十日町明石ちぢみの大きな魅力でしょう。
またそのほかの魅力としてあげられるのは、サラッとした軽い着心地でしょう。前の章でも紹介したように、十日町明石ちぢみの緯糸は、強撚糸という糸に強い撚りを加えたものです。この強撚糸は1メートルあたり、約4,000回もの撚りがかかっており、シボという独特の凹凸を生みます。この凹凸がサラッとした着心地を生む最大の要因です。このシボがあることで、汗ばむような暑い夏の季節でも、肌にべったりとくっつかないサラッとした軽い着心地が実現できます。
余談にはなりますが、十日町明石ちぢみのお手入れ方法には少し注意が必要になります。一点だけご紹介します。十日町明石ちぢみは、シボとよばれる独特の凹凸があることが一つの魅力です。それなのにアイロンをかけるとこのシボが伸びてしまいます。ということで、決してアイロンをかけてしまわないよう注意してください。
まとめ
いかがでしたか。今回の記事では、数百年も前から製糸業で栄えた、新潟県十日町市が誇る、十日町明石ちぢみを紹介していきました。十日町明石ちぢみの魅力は、贅沢に素材を使ったからこそ出せる肌触りのよさと、汗ばむ夏場でもサラッと着用できる着心地のよさでした。また幻の蝉の翅とも呼ばれる、透けすぎない透け感は、大正や昭和の時代を生きた多くの女性を虜にしたことも紹介してききました。十日町明石ちぢみは、見た目の魅力もありますが、やはり着てみて初めて気づく魅力が存在しています。今回の記事を読んで、十日町明石ちぢみに興味を持った人はぜひ一度着用してみてください。