塩沢紬って知ってる?着物愛好家から人気の高い高級紬をご紹介!
着物の素晴らしさのひとつに、着ることで豊かな気持ちになれることがあります。今回の記事で紹介するのは、特別な気分に浸らせてくれる、日本屈指の高級紬、塩沢紬のことです。はじまりの歴史にも触れつつ、特徴や魅力について解説していきましょう。着物愛好家のみなさんだけでなく、あまりよく知らない方も必見です。
塩沢紬とは?
塩沢紬について紹介する前に、まずは、紬とはいったいどういうものなのか、簡単におさらいしておきましょう。素材に玉繭や屑繭でできた紬糸が使われた、絹織物のひとつです。多彩な模様づくりが可能であり、色落ちなど経年劣化にも強い耐久性が特徴。また、全国に広がる産地ごとの個性を楽しめる点も醍醐味となっています。
では、いろいろな織物がある中で、塩沢紬とはどんなものなのでしょうか。コシヒカリで名高い新潟県南魚沼市、塩沢町周辺で生産される織物のことを言います。奈良時代に紡がれた麻布が正倉院に残っているほど、この地域は昔から織物づくりが盛んでした。当時の技術を絹織物に活かしたのが塩沢紬で、今から260年ほど前、江戸時代の明和年間に始まったものとされています。茨城、栃木にまたがる結城紬、鹿児島の大島紬と並んで、日本三大紬に数えられることもあり、高級紬として全国的にも有名。
また、昭和50年2月には、国から伝統的工芸品として認定され、現在では、海外からも注目を集めるようになっています。落ち着いた色味と独特な模様、着心地のよさは、ほかのものとはまた違う特質で、着物愛好家のみなさんからも深く愛されている織物です。
塩沢紬の特徴
多くの人たちを魅了してやまない秘密はどこにあるのでしょうか。実に気になるところです。塩沢紬のいちばんの特徴といえば、きめ細やかな絣模様にあります。極端に細い生糸と玉糸を使った経糸と、真綿由来のやわらかい横糸、このふたつを合わせ織り上げることによって、飽きのこない模様が生み出されていきます。十字絣をはじめ、蚊絣、亀甲絣、縞絣など種類もさまざまで、思わず見入ってしまう繊細さが共通点。ほかの着物と違って、パッと目に飛び込んでくる派手さよりも、シンプルかつ、着れば着るほど愛着が湧いてくるデザイン性が重視されています。
さらに特色を際立たせているのが、生地の表面上にあるシボと呼ばれる凸凹です。模様の一部として取り入れられているだけでなく、凸凹があるおかげで着崩れの心配がないのも、愛される理由のひとつになっています。
完成にいたるまでの過程もまた挙げておきたいところです。図案づくりから撚糸、墨付け、刷り込み、本番の機織りまで、すべて職人さんによる手作業で、時間も労力も惜しみなく注ぎ込まれています。今日まで続く一貫した高品質は、職人さんたちの丹念な仕事ぶりに支えられている、といってもいいでしょう。塩沢紬には、最高級とされる越後上布やシボが効果的な本塩沢、肌ざわりのよさが光る夏塩沢といったものがそろい、身に着ける状況や季節によって選べるようになっています。
塩沢紬の魅力
前述したように、塩沢紬は日本三大紬と並び称されるほど、高い認知度を誇っています。先ほど挙げた特徴を整理しつつ、魅力について解説していきましょう。
まずは、経糸と横糸が織りなす絣模様の味わい深さが挙げられます。十字絣を例にすれば、表面的な華やかさは控えめでも、生地の模様をじっくり見ていくと、思わず引き込まれてしまう美しさを漂わせています。身に着ける人の存在感を引き立ててくれる上品さがあり、多くの方から人気があるのも納得するほどです。
次に紹介したいのは、洗練された模様だけでなく、機能性にも優れている点でしょう。生地上のシボがひっかかりとなって、着崩れを防止。なおかつ、さらりとした感触までも備えています。かつて塩沢お召と呼ばれた本塩沢は、この特性を活かした織物。夏でも着やすい着物として今ではすっかり定着しています。
最後に触れておきたいのは、塩沢紬づくりの制作工程です。実は、見た目のシンプルさからは想像できないほど、手間暇がかかっています。手括り、手摺り込みを信条とし、重要なプロセスを省かずに、ひとつひとつ職人さんが手作業。伝統をベースとした確かな技術があるからこそ、はじめて魅力的な模様が表現できるというわけです。
まとめ
今回の記事では、高級紬としてよく知られる塩沢紬について、いろいろと説明しました。人が経糸、織物が横糸となり、今まで紡がれてきた着物の歴史。塩沢紬もまた、その流れの中に位置づけられます。全国に点在する紬の産地は、いずれも土地に根差し、風土の特色を反映させたものばかり。食べものや陶器などのように、産地ごとの味わいがある点も面白い見どころです。日本三大紬としても名を連ね、特別感あふれる塩沢紬は、着物愛好家のみなさんにとって一度は着てみたい着物のひとつでしょう。ご紹介した特徴や美点をヒントに、塩沢紬への興味、さらなる着物愛を育くんでみてください。