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日本三大絣のひとつ「久留米絣」とは?知られざる着物ヒストリー

公開日:2023/03/01  

福岡県の築後地方で生まれた「久留米絣」は、繊細な柄と親しみやすい風合いで、長きにわたり愛されてきた織物です。丁寧な技術と芸術的な美しさは高く評価され、現在でもさまざまな工夫を重ね発展しています。この記事では、伝統的な久留米絣の誕生や製作工程、愛される魅力について詳しくお伝えします。

ひとりの少女が編み出した織物

日本の代表的な織物には「備後絣」「伊予絣」「久留米絣」の3つがあり、その中のひとつ「久留米絣」は、福岡県の久留米市周辺地域で生産される織物です。通気性がよく、洗うほどに風合いが増す綿素材の生地は、普段着として親しまれてきました。

そんな久留米絣の誕生は、1800年頃にまで遡ります。当時12、3歳の少女「井上伝(いのうえでん)」が久留米絣の工法を発見したとされています。織物職人でもあった伝は、ある日色褪せた着物にできた斑点模様が目に留まり、糸をほどいて模様の仕組みを研究。

柄ができるように部分的に糸をくくり、藍で染めて織りあげることで模様のある織物に仕上げる方法を生み出しました。この手法でさまざまな模様の織物が生産できるようになり、久留米絣は発展します。伝は久留米絣を後世に残すためにも力を尽くし、1,000人以上の弟子に技術を継承しました。

伝が編み出した久留米絣の手法をもとに、絵柄をイメージ通りに実現できる技法「絵絣」を作った大塚太蔵や、細かい斑紋のような「小絣」を考えた牛島ノシが久留米絣の普及に貢献。彼らの功労により、久留米絣は伝統技術として全国で愛されるようになりました。

洋服が登場してからは需要が落ちたものの、最近では新たに注目を集めるようになり、久留米絣を製作する職人も出てきました。

久留米絣の制作工程

久留米絣の製作工程は、美しい模様を作りあげるために綿密に計算されています。どの工程も繊細で、熟練した職人による手作業です。

図案作り

最初の工程は、模様の図案作りです。織り終えたときに模様が綺麗に完成するように、経糸と緯糸の配分数も決めていきます。織る糸の不純物を取り除いて強くするために、糸をたく作業や漂白、のりづけなどさまざまな工程があります。

手括り(てくくり)

久留米絣はでき上がったときの柄を想定して、糸を部分的に染めていきます。白く残す部分は、藍染をしても染まらないようにするために、麻や綿糸でくくっていきます。そうすることで図案の模様として織りあがるため、手括りはとても重要な工程のひとつです。

藍染(あいぞめ)

白く残す部分を糸でくくったら、藍で染める工程に進みます。藍染で使用されるのは、天然の上質な藍です。下藍、中藍、上藍と濃度の低い順に染めていき、絞っては叩く作業を何十回と繰り返します。

白と紺の色合いを際立たせ、美しく染めあげるために大切な作業です。藍染のあとは、水洗いでアクや汚れを洗い流し、のりづけや乾燥を行います。

手織り

久留米絣の製織には投杼機(なげひばた)という手織り機を使います。綺麗に柄が出るように糸を合わせながら織るのは、熟練を要する作業です。織りあがったら湯通しし、乾燥させて完成です。

久留米絣の魅力

200年以上にわたり受け継がれてきた伝統的な久留米絣は、服や小物、雑貨にも使われ、実用性と美しさが高く評価されてきました。熟練した職人の手で作られる久留米絣の魅力をご紹介します。

素朴で多彩な柄

想定した模様のとおりに織りあがるように糸を染めて作られる久留米絣は、時代とともにさまざまな柄で生産されてきました。

手作業で作られた久留米絣は、柄のかすみやにじみも味があり、手作りの風合いが愛されています。最近の久留米絣は藍以外の色でも生産されるようになり、素朴で多彩な柄を活かして洋服や雑貨など、さまざまなアイテムに活用されています。

白と紺のコントラスト

天然の藍で染めあげる久留米絣は、白色と紺色がくっきりと際立つ美しさがあります。この色合いは、50回以上にわたって染めあげる丁寧な作業により実現します。洗うたびに白と紺のコントラストが映えるようになり、使っていくうちに変化する色合いは久留米絣の魅力のひとつです。

ぬくもりを感じる風合い

久留米絣は通気性に優れ、夏は涼しく冬は暖かく、丈夫で着やすいことから普段着として愛用されてきました。肌なじみがよく、洗えば洗うほど風合いが増す綿織物です。職人の手によってひとつひとつ丁寧に作られた久留米絣は温かみがあり、使うほどに愛着の湧く織物です。

まとめ

久留米絣の誕生や製作工程、魅力についてお伝えしました。200年以上も前にひとりの少女によって生み出された久留米絣は、日本の伝統工芸品として今もなお生産され、発展を続けています。

柄に合わせて糸を染め上げる技法は、熟練を要する繊細な作業です。職人の手で作られたぬくもりのある美しい風合いは、これからも多くの人に愛され続けるでしょう。

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