世界に誇る日本の伝統工芸品「大島紬」!その魅力に迫る!
日本が世界に誇るものはいろいろとありますが、着物、とくに紬に関していえば、まず大島紬の名前が挙がります。何となく聞いたことはあっても詳しくは知らない人もいることでしょう。今回の記事では、世界を魅了する理由を解き明かしつつ、その魅力について紹介します。
大島紬は結城紬と並ぶ高級紬
日本三大紬に数えられる大島紬は、着物になじみのない人でも一度は耳にしたことがあるでしょう。それほど抜群の知名度を誇っています。まずは基本的な知識をひと通り踏まえておきましょう。大島紬がつくられているのは、鹿児島県の南部、奄美群島です。ここで生産される織物がすべて大島紬として認められているわけではありません。昭和55年、通産省制定の5項目に渡る条件を満たすものだけが認定される決まりになっています。
内容をざっと説明すると、絹100%で先染めの手織り、平織りであること、さらに締機や手機を使って手作業で織り上げることなど。きちんとした手順を経てようやく生み出される大島紬は、国指定の伝統的工芸品にも選ばれています。ひときわ目を引く独特なツヤと文様の美しさ、落ち着きのある色合い、そして、しなやかな着心地。どの要素にも特別感あふれるのが、大島紬の特色です。
着物に関心のある人にとっては、将来、一度くらいは袖を通してみたいと願わずにはいられない織物でしょう。高級紬で全国的に有名な結城紬と並べ称されるほどの人気ぶりです。
大島紬は世界三大織物にも数えられている
大島紬の評判は国内だけに留まるものではありません。海を越えて広く外国からも認知されているのはご存じでしょうか。イランのペルシャ絨毯、フランスのゴブラン織と並んで、今や世界三大織物として高評価を得ています。
では、世界的な称賛は、いったいどこに理由があるのか、探っていきましょう。まず指摘しておきたいのが、圧倒的ともいえるくらいの労力のかけ方です。生産工程は実に30を超え、職人さんの優れた技術によって、半月以上も時間を費やした上で、やっとひとつの完成品ができます。さまざまなプロセスを経て仕上がった製品は、高級感を漂わせつつも、軽くて、保温性も抜群。着こなすほどにフィット感が増す装用性、着物で気になりがちなシワもできにくい、という心憎い美点まで備えています。さらに、100年以上もの歳月に耐えうる丈夫さもまた、特筆すべき魅力でしょう。リレーのバトンのように、ひとつの着物が三世代間で引き継がれていくなんて驚くばかりです。
前述した特徴に加え、なまめかしい色調と優美な文様も注目のポイントです。光沢を帯びた黒い色味は、泥染めならではの風合いで、世界を見渡しても、奄美大島でしか使われていない技法となっています。奄美地方の自然、とりわけ草木を文様の素材にしている点も、秀逸なデザイン性を裏づける鍵。大島紬を代表するものには、ソテツとハブを巧みに組み合わせた女性用の龍郷柄や男性用の亀甲柄などがあります。
1300年以上続く大島紬の歴史
大島紬の歴史は、約1300年以上も前から続いています。もともと奄美大島は養蚕業に適していて、大昔から絹織物がつくられてきました。当時は、農民たちの日常服だったといいます。文献の記録としては、早くも奈良時代に、東大寺正倉院の献物表に大島紬のことが記されています。
時代が進む中で、手紬などの技法を発展させながらも、江戸時代の1720年に、大島紬にとって歴史的な変化が起こります。薩摩藩から紬着用禁止令が発令。この影響で島民の着用が禁止され、大島紬は藩への献上品として上納されることになりました。現在のように商品化され、市場に出回るようになったのは、明治時代のことで、第3回内国勧業博覧会などを通じて、だんだんとその名が知れ渡るようになっていきます。
大正時代の終わり頃、1921年には生産量が飛躍的に伸び、33万反を数えるほどに。この時期を境に、本絹糸を使用したものに変わっていきました。昭和に入ってからは、合成染料の導入により、色大島や白地大島といったものが生み出され、1975年には、伝統的工芸品として国からの指定を受けました。
現在では、着物以外の分野にも活躍の場を広げ、サイフをはじめ、バッグやネクタイ、ショール、ブックカバーなど、ふだん使いできるアイテムに、大島紬の素材や技術が取り入れられています。改めて振り返ってみると、今では世界的なブランドとして認められている大島紬もまた、ほかの織物と同じように、時代の流れの中でいかに変化していったかがよくわかります。
まとめ
愛好家のみなさんにとっての憧れ、大島紬の魅力について、成り立ちをたどりつつ、いろいろとご紹介しました。豊かな自然をモチーフに、時の流れの中で技を進化させながら、大島紬は、今では世界的ブランドにまでなりました。発展の背景に、いつの時代にも、仕事を誠実に全うする職人さんがいたことを忘れるわけにはいきません。今回の記事を通して、大島紬に新しく興味を持ち、もっと好きになっていただければ、と願うばかりです。