沖縄の伝統的な八重山ミンサーとは?柄に込められた意味をご紹介!
八重山ミンサーは、沖縄で古くから織られているミンサー織りと呼ばれる織物の1つで、素材は木綿から作られています。素朴な風合いと爽やかな藍色の布地に、5つと4つの四角形が組み合わされた柄が特徴です。今回は八重山ミンサーの柄にこめられた意味を通して、八重山ミンサーの歴史とどのような織物なのかを詳しく解説します。
八重山ミンサーとは
八重山ミンサーは沖縄県の南部に位置する八重山諸島の竹富島が発祥で、現在でも竹富町や石垣市を中心に作られています。昔はおもに普段使い用の角帯として用いられていました。後述しますが、八重山ミンサーの持つ意味合いから、着用するのは女性ではなくおもに男性でした。
しかし、現在では性別や年齢にかかわらず幅広い人たちに愛され、知名度のある織物になっています。石垣島出身の女性アーティストが以前NHKの紅白歌合戦で歌唱する時、八重山ミンサーで作られた衣装を着用したこともあり、上皇后が以前使用したバッグにもミンサー織りのものがあります。
さらにはパリの若手デザイナーの新鋭ブランドとのコラボレーション作品として、八重山ミンサーがファッションの祭典であるパリ・コレクションにて発表されたこともあり、世界的に関心を集めました。その魅力は国内だけではなく世界でも認められ高く評価されています。
シルクロードを経て伝わった織物技術
八重山ミンサーの起源はおよそ400年前まで遡ります。17~18世紀ごろにアフガニスタンからシルクロードを経て、中国を通して八重山地方に伝わった織物の技術が、のちに八重山ミンサーとして独自に発展したというのがもっとも有力な説ですが、琉球王朝時代にすでに八重山地方では木綿が栽培されて織物が作られており、この頃からすでに八重山ミンサーが織られていたという説も存在するため、現時点でははっきりとは分かっていません。しかしいずれにせよ、古くから八重山の人々の生活に根付き、その土地で発展を遂げてきた織物という点で、八重山ミンサーは八重山の歴史と常にともにあったといえるでしょう。
八重山ミンサーの柄に込められた意味
八重山ミンサーには5つと4つの四角形が交互に出てくるという特徴的な柄が織られていますが、実はこの柄にはロマンティックな成り立ちがあるのをご存知でしょうか。八重山ミンサーはもともと、女性から男性への愛情の証の贈り物として用いられてきました。日本の多くの地域と同じように、八重山地方にもかつては通い婚という風習があり、八重山地方の女性たちは通い婚の相手の男性に贈るものとして八重山ミンサーを織っていました。
通い婚とは、夫と妻が同居せず、夫が妻の家に通う形式をとった婚姻関係のことで、別名「妻問婚」とも呼ばれます。当時の婚姻関係は現代と比べてとても曖昧で、もちろん婚姻届など正式なものは存在しませんし、夫が妻のもとに通うのをやめてしまえば婚姻関係も終わってしまうという儚いものでした。必然的に、男性が通ってくれるのを待つしかない女性は受身の存在にならざるをえません。男性が心変わりしてしまえば自分と相手の婚姻関係はそこまでということになるからです。
昔の八重山地方でそんな女性たちが愛と願いを込めて、いつまでも男性からの愛情が途切れないように、求婚された際に返事代わりとして織って男性に贈ったのが八重山ミンサーです。八重山ミンサーの特徴である5つと4つの四角形を組み合わせた柄にも、5つの四角には「いつ(五)の」という意味が、4つの四角には「世(四)までも」という意味が、またムカデの足のことを表すヤシラミ柄と呼ばれる短い縞が続いた模様にも、ムカデの足の多さにちなんで「足しげく」という意味が込められています。つまり、女性から男性への「”いつの世までも、足しげく”私のところへ通ってくださいね」という感情を表現した、願掛けのような存在でもあったのです。
さらに、八重山ミンサーは何度も藍色を重ねて染めていくことから「愛(藍)を重ねる」という意味もあるのではないかといわれています。一見、シンプルでスタイリッシュな柄に見えますが、実は女性の深い愛情と願いが込められていて情熱的な由来を持つ八重山ミンサー。現在は通い婚の風習も当然なくなっていますが、八重山ミンサーに込められた「誰かを大切に思う気持ち」「誰かの末長い幸せを祈る気持ち」は今でも受け継がれています。配偶者や恋人はもちろん、大切な人に贈る際にはぴったりな織物ですよね。
まとめ
八重山ミンサーの柄には八重山地方に暮らした当時の女性たちの切実な感情が表現されていました。かつて愛の証として求婚の返答をする際に贈られた八重山ミンサーは、現在では幅広いジャンルでさまざまな使い方をされています。着物を着ない人でも、ポーチやネクタイなどの小物やタペストリーなどで楽しむこともできます。さらりとした感触と、力強くも素朴な風合いとともに、八重山ミンサーの柄の成り立ちや意味に思いを馳せれば、さらに愛着を持って使うことができるのではないでしょうか。ぜひ一度手に取ってみてくださいね。