日本三大紬のひとつ!上田紬の魅力と着こなし方をご紹介!
上田紬がなぜ日本三大紬に数えられるようになったのか、疑問を抱いたことはないでしょうか。今回の記事では、歴史的な視点も取り入れながら、現在にいたる特徴や魅力をひも解いていきます。この一文を通して、今まで知らなかったこと、はじめて気づかされることがひとつでもあれば幸いです。
上田紬とは
長野県上田地方を中心につくられる上田紬とは、具体的にどういうものを指すのか、ご存じでしょうか?上田紬とは、伊那紬、飯田紬、松本軸、と並ぶ信州紬のひとつで、伝統的工芸品として国の指定を受けている織物のことです。
ちなみに、紬について触れておくと、屑繭などの真綿でできた糸で織り上げられた絹織物のことを言います。古い時代から上田地方は養蚕業が盛んな土地柄で、織物づくりに適した環境がそろっていました。
当時は、農民たちのふだん使いの衣服として織られ、使用されていたといいます。上田城が築かれると、地場産業のひとつに認められ、地域に普及していきました。
では、地元で使われていた上田紬がどうして全国区に躍り出るようになったのか、不思議に感じることでしょう。その背景には、真田昌幸、幸村父子の関ヶ原の戦いでの活躍があったと考えられています。
のちに語り継がれるほど、勇壮かつ、たくましく戦った父子。その二人の姿と、上田紬の特徴である丈夫さが、人々の間で重ね合わされ、口伝え、今でいうところの口コミで全国に広がっていったわけです。
大河ドラマの主人公にもなった人物が関わっていたとは意外な驚き。井原西鶴の日本永代蔵の中でも言及されるほど、往時の人気ぶりは確かなものでした。
上田紬の特徴
今では日本三大紬のひとつと形容される上田紬ですが、有名になったのは、なにも戦国武将のお手柄だけではありません。一般的に浸透していったのは、もちろん、上田紬ならではの特徴があったからこそです。
いろいろある中でもっとも特筆すべきポイントは、先ほどにも少し説明したように、頑丈であること。ひとつの紬で3度も裏地が交換可能なほど長持ちし、昔から三裏縞、と称えられてきました。
ほかの織物と一線を画す丈夫さは、独特の工程に理由があります。神経の行き届いた糸使いで入念に織り込んでいくことによって、耐久性が飛躍的に向上。ひとつひとつの作業のきめ細やかさが目を見張る強度を支えているわけです。上田紬がもともと田畑で働く農民たちのふだん着であった歴史も、成立の要因になっています。
次に、見飽きないシンプルなデザイン性も、指摘したいところです。縞と格子柄を中心に、落ち着いた風合いで、工房ごとに色味の種類も実に多彩。日常の暮らしに取り入れても違和感のない趣をもち合わせています。
また、分業制を採用せず、すべての工程を一人で担うため、各職人の自在な表現が発揮され、個性的なものが生産されている点も、魅力を裏づける要素。
飾り気のない見た目の美しさをはじめ、絹らしさを感じさせる心地よい肌ざわり、そして保温性を含めた機能的な強みも加わり、上田紬はこれまで長い間に渡って、多くの人たちに受け入れられてきました。
上田紬はカジュアルに着られる着物
前項でもお話したように、上田紬のルーツは、かつて農民たちが日常的に着ているものにありました。いわば、ごくふつうのカジュアル服だったわけです。はじまりの歴史的背景から見ても、現代でも同じようにふだん着として上田紬を着こなしたい、と望むのは、とても自然な流れといっていいでしょう。
都合のよいことに、上田紬には日常使いに光る特性がいろいろとそろっています。シックなものから明るいものまで幅広い色使いや小粋な柄、夏は涼しく、冬は暖かい、そして、やさしい着心地。きわめつけは、昔から評判だった三裏縞と表現されたほどの丈夫さ、これだけの魅力が並んでいたら、ふだんから着ないわけにはいきません。
消耗品と違い、長きに渡って着られる点も大きなメリットといえます。長期の視点に立てば経済的にもお得。着る回数が増えれば増えるほど親しみが湧くうえ、そのつど刻まれる思い出も印象的なものになります。着ているものが変われば、心も様変わりするもの。
最近では、以前よりもずっと手に取る機会が増えているうえ、気軽にレンタルできるようになっています。気心の知れた友人たちと着物姿で町を歩けば、見慣れている場所がとても新鮮に目に映ることもあるでしょう。まわりからの注目も心地よい刺激です。
まとめ
上田紬が織りなす着物のお話、いかがでしたか。今回は成り立ちから、日本三大紬として今に続く評判のもとになった歴史的人物をからめつつ、解説しました。上田紬の歴史は、農民たちのふだん着から始まりました。
着こなし軽快で、丈夫で長持ち、昔から続く特徴は職人さんたちの技によって、今も脈々と引き継がれています。今回の記事を通して、着物に対する理解の手助け、あるいは上田紬のことをもっと知りたい、と思っていただくきっかけになればうれしい限りです。