絹の光沢と繊細な模様が美しい十日町絣!現代との融合も可能?
今回の記事では、新潟県を中心に現在も生産され続けている十日町絣を紹介します。十日町絣は、新潟県という独特な気候をもつ地域の特色をいかした日本の伝統工芸品です。この記事を読むことで、十日町絣の特徴やその歴史、さらに現在でも十日町絣が親しまれている理由を理解できます。それでは紹介していきましょう。
十日町絣(とおかまちがすり)とは
十日町絣は、絹織物です。生産地は、その名の通り新潟県の十日町市や中魚沼郡津南町周辺になります。その特徴は、絹織物が持つ高級感のある光沢と、独特な風合いです。みなさんは絣という言葉を聞いたことがあるでしょう。手工芸に詳しい人であれば知っている人もいるかもしれませんが、中々耳なじみのない言葉かもしれません。この十日町絣の「絣」は、織物の技法の1つです。どういった技法か説明します。
まず、絣の織物を生産するための糸を絣糸といいます。絣糸とは、括りという技法を使って一本の糸を数色に染め分けた糸のことをいいます。一般的には、染色せずに残した白色ともう一色であることがほとんどです。そして絣とは、この絣糸を経糸か緯糸、もしくはその両方に使用することで、絣模様を表現する技法です。この十日町絣に似た織物に、十日町絣明石縮という織物があります。この2つの織物は、絣という技法を使用している点は共通しています。
違いは「撚糸」の方法です。撚糸とは、簡単にいうと「糸にねじりをかける」ことです。そのねじり具合の違いによって、生地全体の風合いや丈夫さに違いが生まれます。余談にはなりますが、撚糸の「撚」は、糸に撚りをかけるという使い方をします。「糸により」をかけると読みます。みなさんも「腕によりをかける」や「元彼とよりを戻す」という言葉を使ったことがあるかもしれませんが、その語源はこの「糸に撚りをかける」という言葉です。
十日町絣の歴史
続いて十日町絣の歴史を紹介します。十日町絣の生産地である十日町市は、飛鳥時代の天平文化の頃から、織物業で栄えていました。十日町市一帯は、十日町絣以前にも多くの名産品を生産しています。最初に十日町市の名産品として有名になったのが、苧麻といわれる麻の一種を原材料とした布でした。続いて有名になったのが、武士の間で人気となった「越後縮」と呼ばれる品です。この2つの品の流行もあり、十日町市は高級織物の生産地というポジションを確立します。
その後、1700年代前半には、越後縮で使用されていた技術を転用し、絹織物の生産に力が入れられるようになります。1800年代の後半には、絣糸を経にだけ使用する「経絣織」の技術が確立し、明治時代に入ると、緯絣の技術も定着しました。その後の1950年代には染色の技術も磨かれるようになり、1982年には経済産業大臣の指定を受け、十日町絣は国の伝統工芸品に選ばれました。
現在では、十日町絣を生産できる職人も減少しています。ただ十日町絣の職人達は、ただ伝統を継承していくのではなく、次の時代に十日町絣が受け入れられるよう、新たな技術を磨き、今の時代にもフィットするような新しいブランドの開発にも力を入れています。
現在も進化を続けている十日町絣
最後の章では、十日町絣が現代においてどのように進化し続けているのかを紹介します。十日町絣は、伝統的な文様を施した商品だけでなく、現代的で、日常にも取り入れやすいファッショナブルなデザインを施した商品も生産されています。そのため、フォーマルなシーンだけでなく、カジュアルなシーンでも着用されています。
そして、もう一つの魅力になっている部分が、価格の安さでしょう。現在では需要が減っているため、生産量が減り昔よりは価格が高騰していますが、生地も丈夫で、比較的安価に手に入れられます。最後に十日町絣のお手入れ方法を紹介します。十日町絣は絹製品です。そのため自宅での洗濯機による水洗いは控えて、クリーニング店にドライクリーニングしてもらうことをおすすめします。
また、もし日常での着用回数が多く、自宅で気軽に洗濯をしたいという方に向けて、十日町絣にウォッシャブル加工を施してくれる専門業者も存在しています。正しいお手入れ方法で手入れを続けていけば、絹独特の美しいツヤを長く楽しめる織物です。ぜひ今回紹介したお手入れ方法に従って手入れすることをおすすめします。
まとめ
いかがでしたか。今回は新潟県の十日町市を中心に今でも生産が続けられる十日町絣を紹介していきました。新潟という、日本でも独特の地理的環境をもつ場所だからこそ生産できる、美しいツヤが魅力的な絹織物でした。また、この十日町絣は伝統工芸品でありながら、現代的でファッショナブルな要素を取り入れた商品も積極的に生産されています。かしこまったようなフォーマルな場所だけでなく、日常的でカジュアルなシーンでも取り入れやすい商品が多く存在しています。またお手入れ方法にこだわることで、長い期間着用することも可能です。ぜひ今回の記事を読んで興味をもった方は一度購入を検討してみてはいかがでしょうか。