羽越しな布ってどんなもの?木の皮を使用した日本最古の織物とは
今回の記事で紹介するのは、日本最古の織物とよばれる羽越しな布です。「そもそも羽越しな布ってどんな布」という解説から、羽越しな布の歴史、さらには羽越しな布の着こなし方までわかりやすく解説します。この記事を読めば、羽越しな布のことを知り、着物に関する知識の幅を広げられるでしょう。それでは解説します。
樹皮を紡いで作る羽越しな布とは
羽越しな布とは、沖縄の芭蕉布や静岡の葛布と並び、三代古代織と呼ばれる、樹皮から人を紡いで作る織物です。山に囲まれた、冬の寒さが厳しい豪雪地帯で発展してきた織物で、そこに住む女性たちの貴重な現金の収入源としての役割も果たしました。羽越しな布の名前の由来は、制作された土地である、旧国名の羽前と越後から取られたといわれています。
余談にはなりますが、羽前は現在の山形県の大部分にあたる土地を指し、越後は現在の新潟県の大部分にあたる土地を指します。羽越しな布の「しな」の由来は、しな布の原材料がシナノキやオオバダイジュ、ノジリボダイジュであることです。その特徴は、手触りでしょう。木の皮を使用していることもあり、布と呼ぶには抵抗感があるほど、硬く、突っ張りのある素材になっています。水に強いことも一つの特徴です。
また羽越しな布を作るには、一年の期間を要するといわれています。具体的には、梅雨の時期にシナノキを伐採するところから始まり、夏から秋にかけて靭布から繊維を取り出し、冬に糸が完成し、春までに織り上げるという工程を要します。昔は衣服や漁網、布団などの生活用品に使用されていましたが、現在では、バックや帽子などに使用され、生活用というよりは、趣味や工芸品の一種として使用されことがほとんどです。
三代古代布のひとつである羽越しな布の歴史
ここからは羽越しな布の歴史を紹介します。羽越しな布の生産が始まった時期や発祥の地は、現在のところ不明です。しかし、平安時代の書物である「延喜式」には「信濃布」の文字が記載されています。羽越しな布は、別名で「原子布」「古代布」そして「しな布」と呼ばれることもあるため、これは羽越しな布のことを表している可能性があります。つまり、そのころには既にその生産が始まっていた可能性があるといえるでしょう。ちなみに、羽越しな布と同様に、草や木の繊維から布を生産する技術の始まりは縄文時代です。
そして山形や新潟で生産が続けられ、発展を遂げていった羽越しな布ですが、徐々に衰退がはじまります。衰退の原因が、木綿や、戦後における化学繊維の大量繊維による需要の減少です。またここ最近では、従事者も減少し、いま従事している人たちの高齢化が進んでいることも大きな問題と考えられています。
衰退が心配された羽越しな布ですが、再興の動きもいくつか見られています。
1つ目が鶴岡市関川地区に「関川しな織りセンター」という施設が設立され、その地区に住む住民が一丸で、羽越しな布を守ろうという動きです。
2つ目が、2005年9月に経済産業省の伝統工芸品に羽越しな布が指定されたことです。日本において受け継がれきた歴史ある文化を守るという意味でも、生活用品としてではなく、趣味や工芸品としてリブランディングされ、これからも残り続けることを願いましょう。
羽越しな布の着こなし方参考
最後の章では、羽越しな布の着こなし方を紹介します。現在、羽越しな布は帯として使用されることが一般的です。とくに単衣や夏の着物を締める帯として使用することをおすすめします。着用期間は、5月の終わりから9月末までと非常に長く、それも一つの魅力です。
続いてどんな着物の帯として使用することがおすすめか見ていきましょう。おすすめは、上品できれいな着物に使用するより、カジュアルな着物に使用することです。カジュアルな着物であれば、その着物の色や柄がどんな種類であっても、基本的には馴染んでくれるでしょう。
印象としては、麻素材などの着物の帯に使用することで、その涼しげな印象をさらに高めてくれます。例えるなら、夏に使用することが多い「かごバック」のようなイメージです。
最後に、羽越しな布を帯として使用する際のコツを紹介します。最初の章でも述べたように、羽越しな布はゴワゴワした、非常に硬い素材です。下準備をせず帯として使用すると、うまく伸びてくれません。そのため、使用の2~3時間前に、霧吹きで湿らせておくと、着用時にちょうどいい硬さで仕上がってくれるでしょう。
まとめ
いかがでしたか。今回は、山形県や新潟県で生産されていて、三代古代織の1つと呼ばれる羽越しな布を紹介しました。羽越しな布は、ほかの素材に比べると非常に長い時間をかけて作られます。その丁寧で、手間のかかる工程が、使用者に贅沢感を感じさせてくれるともいえるでしょう。日本の大切な文化を遺していくという意味でも、ぜひ一度レンタルでの試着や、購入を検討してみてはいかがでしょうか。夏に着用することで、涼しげで軽やかな風情を演出してくれることでしょう。