
着物の素材の種類とその特徴・取り扱いの注意点を紹介
着物によく使われる素材は、大きく分けて正絹、木綿、麻、ポリエステル4種類です。本記事では、それら4種類の特徴や取り扱ううえで気をつけるべきポイントを詳しく解説していきます。着物選びで悩んでいる人は、ぜひ本記事を参考にして、素材から着物を選択してみてください。
正絹
絹(シルク)は、蚕の繭から取れる天然のたんぱく質繊維で、着物の代表的な素材として最も上質で格式の高い素材とされています。絹の特徴は、美しい光沢と滑らかな手触りで、肌に吸い付くような感触を持っています。
また、染料がしみこみやすく、美しく染め上げられます。これにより、細かいデザインや鮮明な柄を表現でき、着物の美しさを際立たせます。
さらに、絹は吸水性、吸湿性、通気性、保温性にも優れ、暑い季節には汗を吸収し、湿気を素早く放出します。寒い時期には、長い繊維が空気を多く含むことで保温性が高く、薄くても温かさを感じさせてくれます。
軽くて丈夫なため、長持ちする点も魅力です。しかし、絹は水に弱く濡れると縮むため、取り扱いには注意が必要です。汚れた場合、決して水洗いしてはいけません。
また、絹は紫外線を吸収しやすいため、長時間の直射日光にさらされると黄色く変色します。さらに、虫に食われやすく毛羽立ちが生じやすいため、お手入れも慎重に行う必要があります。
木綿
木綿は、ワタの種子から取れる天然の植物繊維で、主成分はセルロースです。絹がたんぱく質から構成されているのに対し、木綿は植物繊維であるため繊維が太く、木綿糸は絹糸に比べて太めです。
木綿糸で織られた着物は、絹の着物に比べて厚みがあり、素朴な風合いがあります。このため、木綿の着物は普段着や気軽なお出かけに適しており、夏の浴衣にも広く用いられています。
木綿は吸湿性や通気性に優れ、やわらかな肌触りが特徴です。通気性がよいため、春や夏にぴったりの素材で、裏地がない単衣の着物によく使われます。
しかし、木綿の繊維は細かくないため、絹のように繊細な柄を表現することは難しく光沢感や艶もありません。そのため、フォーマルなシーンにはあまり適していません。
木綿は水に強く、家庭で簡単に洗濯ができる点が魅力です。しかし、水に濡れると繊維が収縮して縮む性質があります。縮みは布の強度を高めますが、必ず縮むことを考慮して採寸を行う必要があります。
また、長時間の日光にさらされると、絹と同様に黄色く変色するため、洗濯後は陰干しがおすすめです。木綿の単衣は通気性がよい反面、寒い時期には適さないことがあります。
麻
麻は、麻、苧麻、亜麻から作られる天然繊維で、それぞれヘンプ(麻)、ラミー(苧麻)、リネン(亜麻)として知られています。日本では昔から麻織物が広く用いられ、特にヘンプとラミーが使われてきました。
麻織物は、木綿の普及する前の江戸時代初期までは一般的な着物素材でした。そして、上質な麻織物は「上布」と呼ばれ、高級品として朝廷や幕府に献上されるほど価値があったのです。そして、現在も越後上布や都上布が無形文化財として伝承されています。
麻の最大の特徴は吸水性の高さと発散の速さで、汗をかきやすい暑い季節には非常に適しています。麻は硬くて丈夫かつつやのある生地が特徴で、水にも強いため水洗いにも耐えやすいです。
また、麻の着物には「シボつけ」と呼ばれる作業が施され、細かなしわ(シボ)が全体に入ります。麻は洗濯すると生地がやわらかくなり、肌に馴染みやすくなりますが、しわになりやすい性質もあります。
水洗い後は脱水時間を短くし、ハンガーにかけて干すと、重みで自然にしわを伸ばせます。アイロンがけは麻のシボを潰す可能性があるため、避けた方がよいとされています。
ポリエステル
ポリエステルは、主に石油から作られる化学繊維で、ペットボトルに使われるPET樹脂から生成されます。
ポリエステルの特徴として、乾きやすく丈夫であることが挙げられます。吸水性や吸湿性は低く汗を吸い取りにくいですが、洗濯に強くすぐに乾くため、日常使いに適しているのです。
また、しわになりにくく、しわがついても元に戻りやすい性質があります。さらに、ポリエステルは紫外線に強く、変色しにくい点も特徴です。
表面は光沢があり、つるっとした肌触りで、染織性も良好です。鮮やかな柄や色を表現できるポリエステル素材の着物は、絹とほとんど見分けがつかないほど技術が進化しています。
そのため、普段使いやフォーマルな場面にもポリエステルの着物が増えてきています。ポリエステルは自宅で洗濯できるため、雨の日などにも気軽に着られます。
しかし、ポリエステルは汗を吸い取りにくいため、夏や蒸し暑い時期には不向きな素材です。着用を続けると毛玉ができやすい場合もあります。ポリエステル特有のツヤが目立つこともあり、正式な場に着用する際には、見栄えの確認が大切です。
まとめ
着物の素材には、正絹、木綿、麻、ポリエステルの4種類があり、それぞれに特徴と取り扱いのポイントがあります。正絹は美しい光沢と優れた機能性を持つ高級素材で、木綿は通気性に優れ、カジュアルな場に最適です。麻は夏の暑さに適した吸水性と速乾性を持ち、ポリエステルは手軽に扱える実用的な素材です。素材選びは着物の用途や季節に応じて適切に行い、正しいお手入れの心がけが大切です。