消臭スプレーはNG?着物に染み付いた防虫剤の臭いの消し方とは
着物は繊細で美しい衣装です。そのデリケートな素材と染め方からくる特性上、たとえ臭いが気になったとしても、消臭スプレーを直接使用することは避けるべきです。輪ジミや柄の滲み(にじみ)を引き起こす可能性があるためです。この記事では、なぜ消臭スプレーを着物に使用すべきでないのか、その理由を詳しく説明します。
消臭スプレーを使うのはNG?その理由とは
着物は繊細な素材でつくられており、一般的には絹や紬、木綿などが使われます。
これらの素材は水に敏感で、とくに絹は水分を吸収しやすい性質があります。消臭スプレーに含まれる成分が着物に触れると、素材が損傷する可能性が高まります。この水分が素材に浸透することで、輪ジミや柄の滲みが発生し、着物の美しさが損なわれてしまいます。
消臭スプレーにはアルコール類を使用したものが多く、このような消臭方法は、染色方法によっては変色や色抜け、褪色の原因となり得るため適していません。着物の染め方は非常に繊細で独特であり、アルコールを含む製品が接触すると、染料が崩れる可能性があります。
その結果、色あせたり、色が抜けたりすることがあり、着物の価値の減少につながります。消臭スプレーには、「着物等の和装製品」への使用を禁じる注意書きが明記されていることがあります。
着物の専門家や職人たちも、消臭スプレーの使用を避けることを勧めているので使わないのが賢明でしょう。香水や匂い袋も同様に、着物にシミを作るリスクがあります。香水にはアルコールなどの成分が含まれており、これらが着物の素材にダメージを与える可能性があります。
また、匂い袋に使われる香辛料や乾燥花の成分も、着物にシミを作り出す可能性があるため、慎重に扱う必要があります。
防虫剤のしつこい臭いを取る方法
防虫剤を使って着物を保護することは重要ですが、その際に生じるしつこい臭いが問題となることがあります。
消臭スプレーを使用する代わりに、防虫剤の臭いを取る方法としては、以下の3つが挙げられます。
陰干しで臭いを飛ばす
陰干しは伝統的に安全な方法で、臭いの除去に効果的です。
陽光が直接当たらない風とおしのよい場所で、着物を数週間から1か月ほど陰干ししましょう。この期間が臭いを取り除くのに効果的です。陰干しは着物にダメージを与えず、生地に新鮮な風をとおすことで臭いを飛ばします。
スチームアイロンで消臭
「急ぎで用意したいのに着物の臭いが気になる!」という場合は、スチームアイロンを使用することで臭いを軽減できます。
ただし、正絹の着物や特定の加工が施された着物には注意が必要です。絹は水分を吸うと縮みやすく、不慣れな人がスチームアイロンをかけると縮みしわや型崩れを起こす可能性があります。
素材がよくわからない着物や、絞り染めの繊細な着物なども同様に、スチームアイロンを使った消臭方法はあまりおすすめできません。
置型タイプの消臭剤を使用
スプレータイプの消臭剤は避け、代わりに無香料の置型消臭剤を使用することをおすすめします。
着物と消臭剤を密封するためにビニール袋を使用し、数日から1週間、臭いが気になる部分に置きます。この方法は、臭いを効果的に取り除くのに役立ちます。
着物についてしまった臭いを再発させないためには?
着物を長期間保管する際、虫害を防ぐために防虫剤を使用することが一般的です。
しかし、着物に付いた防虫剤の臭いは、なかなか取れず時折問題となります。ここでは予防法について詳しく紹介します。
無香料タイプの防虫剤を選ぶ
着物を保管する際、防虫剤の選択は重要です。
とくに、金糸や銀糸、絹などの貴重な素材を使用した着物を保護するためには、「きもの専用」の防虫剤を選ぶことがおすすめです。また、無香料タイプや無臭タイプの防虫剤を選ぶことが重要です。
香りのついた防虫剤は、着物の素材に香りが染み付いてしまい、後で取り除くのが難しくなります。
年に2回は虫干しをする
タンスやクローゼットの中で着物を保管する場合、空気が滞ることがあります。
このような環境では、防虫剤の臭いが着物に付きやすくなります。そのため、年に1~2回は虫干し(陰干し)をすることが大切です。虫干しすることで、着物の繊維の中にたまった空気を飛ばし、防虫剤の臭いが着物に付くのを予防できます。
虫干しは、風とおしのよい場所で行うのが効果的です。
臭いが取れない場合は専門店に相談
自宅で対策をしても、防虫剤の臭いが改善されない場合は、いくつかの問題が考えられます。
まず、着物にカビが生えている可能性があるため、確認が必要です。また、防虫剤の使用量が多すぎる場合も臭いの原因となります。
このような場合には、着物クリーニングの専門店に相談することがおすすめです。専門店では、着物のクリーニングや臭いの除去を専門的に行ってくれます。
まとめ
着物はその繊細さから、消臭スプレーなどの製品を使用することは避けるべきです。水分やアルコールを含む成分が着物にダメージを与え、その価値を減少させる可能性があるからです。また、臭いの問題を未然に防ぐために、定期的な虫干しと防虫剤の選択に注意を払う習慣をつけることも大切です。イベント間際に慌てず、いつでも美しい着物を身に纏うことができるよう、早めの準備が重要です。着物を大切に扱い、美しさを長く楽しむために、適切なお手入れ方法を選びましょう。