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本塩沢とはシャリ感とシボ感のある織物!塩沢紬との違いとは?

公開日:2023/03/15  

新潟県南部の魚沼市、塩沢地方を代表する織物の「本塩沢」。落ち着いた色合いと主張しすぎない模様でどんな小物にも合わせやすいということもあり幅広い年代の人に愛され続けている絹織物です。今回は本塩沢という織物がどのようなものなのか、同じ塩沢地方で作られる塩沢紬と異なる点は何なのか、その歴史や製作工程を踏まえて解説します。

本塩沢は新潟県魚沼市で作られている絹織物

冒頭でも述べましたが、本塩沢は新潟県魚沼市の塩沢地方で古くから作られている絹織物です。本塩沢という名前よりも「塩沢おめし」という愛称で古くから広く親しまれてきたため、こちらの名前のほうがより馴染みがある、聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。

本塩沢のもっとも大きな特徴はなんといってもその独特のシボ感とシャリ感です。肌触りがサラッとしていて軽く、身体にまとわりつかずに爽やかな着心地のため、おもに夏用の着物として重宝されています。

本塩沢はもともと麻で織物を作る際の技法を取り入れていて、通常の糸の何倍も撚りをかける強撚糸と呼ばれる糸を使うことで、シボ感と呼ばれる特徴的な見た目と、シャリ感と呼ばれる感触を生み出します。

強撚糸で織り上げたあと、ぬるま湯にもみ込むことで糸が強い力で一気に縮んでいき、結果的に織物にでこぼことした模様を描くのです。本塩沢の見た目のシボ感はこういった工程ででき上がります。そして、この細かいでこぼこによって着る人の肌に触れる部分が少なくなるため、シャリシャリとした感触で涼しげな着物になります。

また、本塩沢は伝統技法を駆使して染められた細かい絣模様も特徴的です。代表的な模様は、亀の甲羅のように六角形の形をかたどったおめでたい「亀甲絣」や、十字模様をかたどった「十字絣」で、描かれた模様が細かければ細かいほど高価で質のいい本塩沢という扱いになります。

決して派手な見た目の織物ではありませんが、その上品な風合いと使いやすさ、素朴で肌触りのよい感触が、今でも多くの人に愛され続けている理由です。

塩沢紬との違い

本塩沢と並んで塩沢地方を代表する織物が「塩沢紬」です。名前が似ているこの2つの織物ですが、決定的な違いは織るときに使用する糸にあります。

塩沢紬は絹の真綿を紡いだ紬糸で織られていて、さらりとしたやわらかな風合いです。対して本塩沢は、繭から採取した糸を何本か束ね染色されたお召し糸で織られていて、前述したとおり糸に強撚をかけているため、塩沢紬よりもシボ感が強く出たサラッとした風合いです。

同じ土地で作られる2つの織物ですが、織るのに使う糸からそもそも違っているので、それぞれ別々の風合いがある着物になります。塩沢紬は昭和52年、本塩沢は昭和51年に国の伝統的工芸品に指定されていて、どちらも日本を代表する織物の1つです。

400年以上続く本塩沢の歴史

そもそも、越後地方では奈良時代のころから麻布が生産され朝廷に献上されていたことが分かっていて、その時に納められたものは今も正倉院に保管されています。麻織物に乾燥は大敵ですが、冬は豪雪に見舞われる越後地方は乾燥しにくく、麻織物を発展させるのに適した土地でした。

また、環境や天候ももちろんですが、雪によって閉ざされ農作業もろくにできず出歩くことも満足にできない冬の日々の中、家で過ごすしかない時間を織物に費やすことで、人々の生活の中から上質な織物が生み出されてきたのでしょう。

江戸時代中期になるとその流れをくんで「越後上布」や「越後縮」と呼ばれる麻織物が作られるようになり、これが現在の本塩沢の起源となっているといわれています。

現在の本塩沢の製作工程

まず図案・設計ののちに下撚りと呼ばれる作業で糸の太さを均一に整えます。そのあと手括りや手すり込みといった技法で染めていき、高温の蒸気で色が抜けないように定着させます。

緯糸に本塩沢の最大の特徴である強い撚りをかけたら、機織を行い布に仕立てます。汚れや糊を洗い流し、湯もみをして特有のシャリ感とシボ感を出したら、本塩沢の完成です。

本塩沢はこういった製作の方法上、水に濡れると縮んでしまうという性質もあります。現に、最終工程で湯もみした際にもシボが生まれることで布が約1割も縮んでしまうほどです。水や雨で濡れてしまわないように充分気をつけるのはもちろんですが、さらに着物に撥水コートをほどこすのも効果的ですし安心ですね。

また湿気にも弱いため、保管する際はなるべく湿度の低い場所を選びましょう。着物の弱点を知り、適切な取り扱いをすれば着物は長く使い続けることができます。

まとめ

今の日本は洋装文化になっているとはいえ、やはり着物は日本人にとって特別なものですし、今なお多くの人に愛され続けています。本塩沢もその中の1つで、古くからの技術が多く駆使された魅力的な織物です。

日本にはさまざまな織物の種類がありますが、それぞれの織物の特徴や歴史を知ることでより身近に感じることができるはずですし、新しく発見することもたくさんあるでしょう。ぜひ着物に興味を持って上手に生活に取り入れてみてくださいね。

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