菱型文様は代表的な伝統文様!歴史の古い文様についてご紹介!
菱形文様は二本の直線が、交差して描かれる文様です。家紋によく使われ、バリエーションも多くあります。日本には200を超える菱形家紋が存在するのです。正確な線を描く菱形は壁紙や外壁など、建築デザインにもよく使われ、身の回りにある、慣れ親しんだ柄といえるでしょう。ここでは菱形文様の歴史や着物の着こなし方について紹介します。
古い歴史をもつ菱型文様とは
菱型文様は2本ずつの直線が斜めに交差して、描き出される柄です。水生植物の菱(ひし)の葉や実と似た形であることから、菱型(ひしがた)と呼ばれています。菱は生命力、繁殖力が強い植物です。そんな菱にあやかって菱型文様には「子孫繁栄」「無病息災」などの祈りが込められています。「健やかに育ってほしい」との願いをこめて、赤ちゃんの産着にもよく描かれてことが多いです。菱型で描き出される四角形は、4つの辺がすべて等しく、2組の直線が並んだ平行四辺形となり、シンプルで正確な文様となります。
起源は縄文時代、菱型文様が描かれた土器が各地で出土しました。聖徳太子が生きた飛鳥時代には着物の地紋として、菱形文様が好まれたようです。平安時代には有職文様となり、高位の人のみが身に着けられる特別な柄として、尊ばれます。正確な平行四辺形である菱形は、中央の空白部分に家名にちなむ花や字を入れ、家紋の形で全国に普及しました。中央から地方へ赴任した貴族たちは、既に家紋をもっており、移住先で分家して、さまざまな形に派生した菱型家紋が生まれます。
もともと有職文様である菱型文様は、格が高く、礼装の着物や帯に仕立てられました。現代でも色とりどりの絹糸で織り上げた、菱形文様の着物や帯は、結婚式など冠婚葬祭の場にふさわしい、充分な格をもっています。
菱文や武田菱など種類が豊富
シンプルで正確な菱型文様は、さまざまなバリエーションが存在します。菱文は菱型を連続して染め抜いたもので、鮮やかな着物となるでしょう。武田菱は甲斐の国、武田氏の家紋として生まれました。4つの菱型を集合させた文様は四割菱といいますが、戦国武将、武田信玄が自家の家紋として合戦場で用いたことから有名になり、武田菱と呼ばれるようになります。
花菱は菱型の中央に4枚の花弁をもつ花が描かれた柄で、豪華で華やかな雰囲気です。花と流水、花と雲などほかのものと合わせて、ひとつの菱型に入れたものもあり、組み合わせは無限に存在します。菱型の上と下に、さらに菱型を重ねたものは松皮菱といいますが、幾何学的な美しさに縁起を重ねる意味もあり、とても人気のある柄といえるでしょう。松の皮をはがした様子に似ているので、松皮菱の名がつけられました。
三菱グループの創始者、岩崎弥太郎の実家紋は三階菱、大きさの違う菱型を三段に重ねたもので、重ね三階菱とも呼ばれます。のちに岩崎弥太郎は三菱商会を立ち上げた際、岩崎家の菱型文様に土佐藩山内家の家紋、土佐柏を取り入れ、三菱のシンボルマークを作り出しました。3つの菱を赤く染め抜いて、三角に配置した菱型文様は三菱グループのシンボル、スリーダイヤとして、世界中を席巻しています。
菱形文様の着物の着こなし方
菱型文様は正確な等辺が、最大の特徴です。着物や帯に仕立てたときは、この等辺が充分活かされるよう、着付けをしてください。
菱型文様の袋帯
菱型文様は西陣織や佐賀錦などの袋帯に、多く仕立てられます。金糸を織り込めば、とても格の高い装いとなるので、留袖、色留袖、訪問着に合わせて締めるとよいでしょう。等辺の特徴が最大に活かされるよう、お太鼓の線とたれ先の線をぴったりと合わせる必要があります。菱型がずれたり、崩れたりしないよう注意してください。菱型文様の線が合わない後ろ姿は野暮、きれいに合った後ろ姿は粋です。
菱型文様の留袖
留袖にも菱型文様はよく使われます。黒留袖も色留袖もシャープなきりっとした印象の着姿になるでしょう。シャープな印象を与えたい人は、菱型文様の留袖をおすすめします。留袖には背と胸、袖に家紋を入れますが、菱型文様の家紋を入れるときは、家紋名だけでなく、画像を用意してください。菱型文様は多種多様で類似性の高いものが多いので、トラブルを避けるためです。
菱型文様の色無地
色無地は一色のみで染めた着物ですが、家紋を入れると立派な礼装となります。地柄に有職文様である菱形文様を指定すると、格調高い着物に仕上がりおすすめです。規則正しい直線が、実直な印象を与えるので、卒業式や入学式など厳粛な儀式に適しています。
菱型文様の小紋
菱型文様は連続して全体を染めると、普段着の小紋としても着られます。紬などの織着物も連続した菱型が映える装いです。菱型の中央に遊び心のあるモチーフを使うと、シャープな印象がやわらぐでしょう。
まとめ
菱型文様は日本の伝統的文様で、有職文様のひとつに数えられます。その歴史は古く、縄文土器にも装飾された文様です。等辺四角形の形状を活かし、多くの家紋にアレンジして使用されました。菱型の中央にモチーフを入れることで、たくさんのバリエーションが存在します。菱型文様の着物は正確な等辺を活かし、線を合わせて着付けることが重要です。