南風原花織とはどんな織物?立体感のある美しさの秘密を解説!
「南風原花織って聞いたことあるけど、どんな織物なの?」と疑問を持っている人もいるのではないでしょうか。琉球花織の一つとして、最近は着物ファンのあいだで注目が高まってきています。この記事では南風原花織が気になっている人向けに、織物の特徴や魅力を詳しく解説します。さっそくみていきましょう。
華やかで美しい南風原花織(はえばるはなおり)
南風原花織は沖縄県南部にある「南風原」という町で代々受け継がれてきた織物です。元々は東南アジアから琉球絣(かすり)として伝わってきたのですが、花織の技術と後に融合し、南風原花織が誕生しました。糸は沖縄県内にしか自生していない琉球藍(リュウキュウアイ)や福木(フクギ)、テカチ(テーチ)などの自然植物によって染めたものを使用しています。
南風原花織の歴史
絣(かすり)の技術が東南アジアから伝わったのが14~15世紀ごろといわれています。当時は王朝に納める「貢納布」として女性たちによって作られていました。明治時代ごろまでは母から娘へ花織が伝承されていました。明治中頃より織物が商品として出回るようになり、技術が学校で教えられるようになっていきます。この頃から多くの技術者によって独自の花織技術や技法が確立されていきました。
しかし、第二次世界大戦後あたりから南風原花織は衰退し、生産が途絶えてしまいました。現在作られているのは、生産が途絶えたあとに沖縄の人々の調査や研究により復活したものです。機械化が進んだ現代において、南風原花織は今でもすべて手作業で作られています。100年以上歴史のある伝統的な技法や地元の自然原料を使用していることから1998年には沖縄県の伝統工芸品に指定されました。
また、南風原町には「かすりロード」と呼ばれているエリアがあり、織物工房や糸張りの作業場など古い時代の街並みがそのまま残っています。「かすりロード」を歩いていると機織りをする音がそこかしこから聞こえてきて、南風原花織の世界をより一層楽しめるでしょう。
南風原花織の特徴的な織り方
南風原花織の織り方は、東南アジアから伝わった琉球絣がもとになっています。一般的な着物などで見かける平織りは、綜絖(そうこう)と呼ばれるタテになる糸を一本ごと上下させる器具を2つ使います。一方、南風原花織では綜絖を8枚から10枚ほど使っているため立体的な図柄の作成が可能になりました。ここでは南風原花織に代表される織り方をいくつかご紹介します。
クワンクワン織
クワンクワンとは、獅子舞が毛を揺らして踊っている様子から由来しています。織り方はヨコ糸を足踏みで浮かして、織布裏に遊び糸が出ている様子を表現しています。
両面浮花織
表面にヨコ糸、裏面にタテ糸を浮かせた糸によって柄を表現する方法で、主に絹や毛糸を使用して織られています。両面浮花織を使ったデザインの中には、タッチリー、喜屋武八枚、十字花織、南風原ロートンなどがあります。
チップガサー
穴を開ける動作を沖縄のことばで表現した名前を持つ織り方です。タテ糸を救って穴をあけ、色がついた糸を穴の部分に入れてデザインを作成します。
南風原斜文(しゃもん)織
照屋八枚や変わり斜文織に代表される織り方です。タテ糸とヨコ糸が交差している点が斜めの方向に並ぶように織ることから名前が由来しています。
立体感のある美しさの秘密は?
南風原花織をひと目見ると、花のような美しさと立体感が特徴的でわかりやすいでしょう。お伝えしたように南風原花織は綜絖を8枚ほど使用することで立体感を出しています。この立体感を出す織り方をすることで、浮糸部分ができ刺繍のような華やかな文様ができ上がっています。
刺繍のように美しい南風原花織の魅力
南風原花織の魅力といえば、鮮やかな色彩と立体的なデザインになります。南風原花織のルーツとなった琉球絣には、約600種類以上の文様があり、さまざまな文様を組み合わせることで、幅広いデザインパターンができます。デザインの中では沖縄独自の自然植物や動物が描かれており、一目見ると南風原花織だとわかるでしょう。
近年は素材も多様化してきています。絹がメインで使用されてきた南風原花織ですが、最近では絹だけではなく麻やコットンを原料にした糸で作られることもあり現代の生活様式にあわせやすいものもあります。南風原花織は帯や着物として出回っていますが、大量生産の機械ではなく熟練の職人にしか作れないため、出会える機会は非常に少ないでしょう。
とくに着物は一つの反物を作るために使う糸が多く手間がかかるため、数が少なくなります。希少な南風原花織の着物や帯に出会えたら、その機会を逃さずに長年連れ添う覚悟で購入することをおすすめします。
まとめ
いかがでしたか。この記事では、最近人気を集めている南風原花織について紹介をしました。さまざまな織り方がある南風原花織ですが、習得するには長年の修行が必要です。熟練した技術で紡ぎ出された帯や着物は、数が少なく貴重なものになります。南風原花織の作品に出会えたら一期一会と思って、逸品と向き合っていきましょう。