自宅でも洗える?着物の洗い方
着物は、自宅で洗うことは不可能というイメージがあり、クリーニング店に持ち込む人がほとんどです。しかも、着物のクリーニングが出来るところを探して持ち込まなければならないこともあり、着物は着るのも大変だけれど、着た後も面倒ということからついつい着るのをためらってしまいがちです。
けれど、よく考えてみると着物は日本人がずっと着てきた衣服であり、現在のように外出着ばかりだったわけではありません。外出着として特別なものもありましたが、普段着として着る着物もあったわけです。普段着であれば当然のことながら洗濯しますので、そう考えると自宅で洗えないはずはないと思えてきます。
しかしながら、現代は普段着ではなく高価な着物を洗うことになりますので、失敗は許されません。とはいえ、洗い方のポイントやコツを知って、自宅で洗えるようになれば、着物を着る機会も増えるのではないでしょうか。
洗える着物かどうかを見極めることが重要
かつては家でお洗濯していたのですから、洗えないはずはないというよりもむしろ、洗えるものであるという認識に変えると、それなら洗ってみようかなという気になります。ただ、洗濯機のなかった時代は、着物の素材によって洗い方を変えていました。さらに、丸洗いが出来ない場合は洗い張りをして、さらに自分で仕立て直すということもしていて、それだけの技術を女性たちが当たり前に持っていたといえます。
その点、今は何もかも洗濯機に放り込んで、スイッチ一つで洗濯機が洗ってくれますので、衣服を洗うということに対する知識や技術は、現代人は昔の人たちに比べてはるかに劣っているといえるでしょう。
そのため、洗える着物かどうかを見極めることが重要とはいえ、何を基準に判断していいかもわからないのが正直なところです。そのような状態で振袖などの高価な着物を洗うのは、やはり危険だからやめておこうということになりますし、着ると後が大変なので着ないでしまっておこうという、箪笥の肥やしになるループがまたしても出来上がってしまうわけです。
着物をきれいにするにはいくつかの選択肢がある
振袖などの高価な着物は、絹でできた正絹と呼ばれるものがほとんどです。一度袖を通したらやはりきれいに洗って片づけたいところですし、もしシミが出来てしまったら、その部分だけはシミ抜きをしてきれいにする必要があります。もっとも安心で確実な方法は、着物のシミ抜きから全体まできれいにしてくれるクリーニング店に頼むことで、おそらくシミ抜きも含めると料金は1万円以上になると思われます。
身近にあるクリーニングのチェーン店でも着物を受けつけてくれますが、シミ抜きは別途費用が必要だったり、あるいは対応していないこともありますので、悩むところです。シミ抜き対応しているところでも、シミ抜き料金に着物のクリーニング代を合わせたら、結構な値段になるのなら、専門店に頼んだ方がいいような気もするからです。
最後の選択肢が、いよいよ自分で洗うという方法です。昨今はクリーニングに出さないといけないという固定観念があったダウンジャケットを自宅で洗う人が増えているくらいですから、正絹の着物でも正しい洗い方さえ知っていれば、洗えそうな気がしてきます。
実際に正絹の着物を洗ってみよう
初めて正絹の着物を洗う時には、いきなり高価な振袖ではなく、ダメになってもいいやと思えるクラスの着物で練習できるのがベターです。用意するものは、着物を浸けられるだけの大きめの洗面器とドライクリーニング用の洗剤です。洗面器に入れた水に洗剤を濃い目に入れたら、そこへキレイにたたんだ着物をそっと入れます。優しく押し洗いをしますが、あまり何度もやっていると色落ちや色移りを起こしてしまう可能性があることから、早めに洗濯液から取り出し、キレイな水を洗面器に張って軽く押しながらすすぐのを繰り返します。5~6回も行えば、ほぼ洗剤は落ちているでしょう。
この後でもっとも重要なのが、決して洗濯機に入れて脱水をしないということです。脱水をすると、着物の表地と裏地がほぼ間違いなくずれてしまうからです。いったんずれてしまったら、専門家に修復してもらうしかないので、クリーニング代よりも高くついてしまいます。そのため、しっかりと水を落として乾かす必要があるものの、着物からは水がぼたぼたと垂れ続けますので、干すときには水が垂れてもいい場所か、下にバケツなどを置いて水を集められるように、前もって準備をしておきましょう。
ある程度経って水が落ちなくなってきたら、風通しのよい日陰で乾かします。繊細な生地のため、お日様に当てた方が早く乾くという発想は捨て、日陰でとにかく風を通して乾かすようにしましょう。風が通り抜けやすいように、ハンガーや洗濯ピンチを使い、立体的に干すのがおすすめです。
濃い色の着物や、金糸銀糸で緻密に作られた着物を自宅でいきなり洗うには勇気がいりますし、できれば避けた方が無難ですが、薄い色合いの訪問着などであれば、正絹の着物でも自宅で洗うことが可能です。丁寧に手間を惜しまず洗えば、かなりきれいに洗い上げることが出来るでしょう。ただし、失敗したときのリスクもしっかり考慮して取り掛かることも、心がけておきたいところです。