
美しい着姿をつくる「おはしょり」の基本と整え方

着物を着たときに、帯の下に見える布の折り返し部分を「おはしょり」といいます。おはしょりは、着物の丈を調整するためのものですが、実はそれだけではありません。そこで本記事では、おはしょりの基本から、理想的な長さや整え方、そして着崩れを防ぐコツまでをわかりやすく解説します。
おはしょりの役割と理想のバランス
おはしょりは、ただ余った丈をたくし上げるためのものではなく、着姿全体を整える大切な部分です。ここでは、その意味と理想的な長さについて見ていきましょう。
おはしょりとはどんな部分?
おはしょりは、着物の裾を足首あたりの位置に合わせるために、余分な丈を腰で折り上げた部分を指します。帯の下に見える布の重なりが「おはしょり」です。この部分があることで、歩いたり座ったりしても裾の長さが一定に保たれ、着崩れしにくくなります。
美しいおはしょりの長さ
一般的に、おはしょりの長さは4〜5cmが目安とされています。長すぎるとだらしなく見え、短すぎると落ち着きがなく見えるため、ちょうどよい長さを意識することが大切です。体型や着物の種類によっても適した長さは変わります。たとえば、振袖は華やかさを出すためにやや長めの5〜7cm、留袖は格式を重視して4〜5cm、訪問着は4〜6cmほどがバランスの取れた長さとされています。
おはしょりが持つ役割
おはしょりは、丈の調整以外にも、シルエットの安定や着崩れ防止、見た目の上品さなど、多くの役割を担っています。腰まわりをスッキリ見せる効果もあり、着物姿をより美しく見せるための欠かせないポイントです。
おはしょりを美しく整えるための基本
おはしょりをきれいに仕上げるには、長さだけでなく形やバランスも大切です。少しの工夫で、すっきりとした着姿に整えることができます。
水平ラインを意識する
おはしょりを整えるときは、帯の下の布が斜めにならないように注意しましょう。前から見たときに水平に見えることが理想です。鏡の前で全体を確認しながら、裾線と平行になるように調整してみてください。
厚みを均一に整える
前後左右で厚みがバラつくと、帯の位置までズレてしまうことがあります。特に腰の後ろ側は、布がたまりやすいので、手のひらで軽く押さえて均等に整えましょう。見た目の美しさだけでなく、動いたときの安定感にもつながります。
シワはその場でリセット
帯を締める前に、必ずおはしょり部分のシワをしっかり取りましょう。シワが残ったままだと、その上から帯を締めても跡が残り、着姿が乱れて見えてしまいます。少し面倒でも、都度整えることがきれいに仕上げるコツです。
おはしょりを整えるコツと着崩れ防止の工夫
着付けに慣れていないと、おはしょりが長すぎたり短すぎたり、左右でずれてしまうことがあります。ここでは、よくあるお悩みとその対処法、そして着崩れを防ぐ工夫について紹介します。
長すぎる・短すぎるときの対処法
おはしょりが長くなってしまった場合は、内側に折り込むか、腰紐をやや高めに結んで調整しましょう。反対に短くて出ない場合は、腰紐を少し下げて布を多めにたくし上げると自然な長さになります。小さな調整の積み重ねで、美しいバランスに整えられます。
左右が斜めになるときの原因と対策
おはしょりが片側だけ上がるなど斜めに歪んでしまう場合、腰紐の位置がずれている可能性があります。紐を結ぶときは、左右が同じ高さになるように意識し、前で軽く引いてから後ろで固定するのがコツです。
小物を活用して着崩れを防ぐ
おはしょりの安定感を高めたいときは、コーリンベルトや伊達締め、補正用のタオルなどを使うのがおすすめです。コーリンベルトで着物の衿元を固定すると、腰回りの動きにもズレにくくなります。補正用タオルで凹凸を整えると、おはしょりのラインがよりきれいに出ます。
着付け教室で学ぶおはしょりのコツと実践の大切さ
おはしょりを自分で整えるのは、思っている以上に繊細な作業です。長さのバランスや布のたるみ具合、帯との位置関係など、ほんの少しの違いで仕上がりが変わります。動画や本で基本を学ぶことはできますが、実際に手を動かしてみると、思うようにいかないことも多いものです。
その点、着付け教室では講師が一人ひとりの体型や着物の特徴に合わせて、もっともきれいに見えるおはしょりの整え方を直接指導してくれます。また、何度も練習するうちに、自分の癖や苦手な動作もわかり、自然と手が動くようになります。
自宅での着付けもぐっとスムーズになり、外出先でも着崩れを直せる自信がつくでしょう。着物をもっと楽しみたい方や、毎回人に着せてもらっている方こそ、着付け教室で学ぶことをおすすめします。
まとめ
おはしょりは、着物の丈を調整するだけでなく、全体の印象を大きく左右する重要なポイントです。理想的な長さや水平ラインの整え方、シワ取りなど、ほんの少しの工夫で着姿は見違えるほど美しくなります。さらに、補正アイテムの活用や腰紐の位置調整などを意識すれば、着崩れしにくく安定した着こなしが叶うことでしょう。おはしょりは一見難しそうに見えても、ポイントさえ掴めば誰でも上品で洗練された仕上がりにできます。着付け教室で実際に学ぶことで自分に合った整え方が身につき、日常の着物時間がもっと心地よく、自信に満ちたものになるでしょう。本記事が、より美しく着物を着こなしたい人の参考になれば幸いです。



















