
着物を普段着にするメリット・デメリットを紹介
近年のファッションの多様化の風潮も相まって、着物を普段着として着用する人が一定数いることをご存じでしょうか。しかし「普段着に着物を着るのはなんだか恥ずかしい」といった風潮が根強いのもまた事実です。そこで今回は、着物を普段着にすることのメリット・デメリットを詳しく解説していきます。
着物を普段着にすることを恥ずかしく感じる理由
着物は美しい日本の伝統衣装として国内外から高く評価されていますが、普段着として着用することに恥ずかしさや抵抗を感じる人も多くいます。その理由の一つに、現代では着物が「珍しい服装」として見られることが挙げられます。
明治時代の文明開化によって欧米文化が急速に広まり、日常の服装は和服から洋服へと移行しました。それ以来、洋服が普段着として定着し、着物は特別な場で着る礼装という印象が強まりました。そのことから、日常生活で着物を着ると「浮いている」と感じられることが多いのです。
また、着物は洋服と比べて着付けが難しく、動きにくい、手軽に洗濯できないなどの点で「煩わしい」というイメージもあります。そのため、合理性を重視する現代において普段着には不向きだと感じられがちです。
さらに、着物の着方にはTPOに応じたルールがあり、特に正式な場では厳格な着こなしが求められます。普段着として自由に着ても問題はありませんが、着物に対する知識が豊富で伝統を重んじる人が他人の着方に口を出すことも珍しくありません。
そのような人の指摘を受けることによって、恥ずかしい思いをする人も少なくないのです。このように、他人からの指摘や視線を気にすることが、着物を普段着にするのをためらわせる原因にもなっています。
着物を普段着にするメリット
着物を普段着に取り入れることには、次の3つの大きなメリットがあります。
着こなしの幅が広がる
まず「着こなしの幅が広がる」という点です。洋服と着物をミックスしたコーディネートができるため、着こなしの幅が広がり、より個性的なファッションを楽しむことができます。
洋服と異なり、着物には「流行」という概念がほとんどなく、いつでも自分の好みに合ったスタイルを選べます。このことから、周囲に流されず自分らしさを表現するファッションとしても魅力的です。
セミフォーマルな場において便利
次に「セミフォーマルな場面で活躍する」という点です。着物は普段着とは一線を画した華やかさがあり、食事会や同窓会、観劇などのセミフォーマルな場でも非常に映えます。洋服の場合、フォーマルなシーンに合わせて特別な一着を用意しなければならないことが多いです。
しかし、着物であればコーディネートに気を配るだけで、品格のある印象を簡単に演出できます。これにより、日常でもセミフォーマルな装いが楽しめ、場にふさわしい服装選びに悩む必要が少なくなるでしょう。
体型を気にせず着やすい
最後に「体型を気にせず着られる」という点も大きなメリットです。洋服では体型にフィットするデザインが多く、ボディラインが気になる場合や体重の変化によって着られなくなることもあります。
しかし、着物は基本的に体型を問わず着用できるよう設計されています。体型に合わせて調整しやすいので、たとえ痩せている人でもタオルを使って体型を補正し美しく着こなすことが可能です。また、体型を隠したい場合にも適しているため、多くの人が安心して着られる衣服といえるでしょう。
着物を普段着にするデメリット
着物を普段着にすることで多くの魅力を享受できる一方で、いくつかのデメリットもあります。
着物に慣れていないと動きづらい
第一に「動きづらさ」が挙げられます。着物は袖が長く、家具やドアに引っ掛けやすいため、日常生活での動作が制限されることが少なくありません。また、足元がスカートやズボンと比べて窮屈になりやすく、階段の昇降が難しいと感じることもあるでしょう。
加えて、お腹周りが帯で締められているため、特に食後には苦しさを感じやすい点も普段着としては不便です。運転をする際も同様に、着物特有の動きにくさが生じます。
着付けに手間がかかる
次に「着付けの手間」がデメリットとして挙げられます。着物はフォーマルな場面に比べれば厳格なルールを守る必要はないものの、正しく着用するためにはある程度の知識やスキルが求められます。
普段着であっても着崩れしているとだらしなく見えてしまうため、きちんとした印象を保つためには、最低限の着付けのコツを身につけておく必要があります。そのため、洋服と比べて着用までに時間と労力がかかり、手軽に外出する際には負担となることもあるでしょう。
なお、着付けの方法を学ぶには、着付け教室に通うことをおすすめします。独学で着付けを学ぶと自己流のやり方になりがちなので、まずは先生に習って基礎から身に着けましょう。
手入れ・保管に手間がかかる
最後に「手入れや保管に手間がかかる」こともデメリットです。着物は基本的に自宅で簡単に洗濯することが難しく、多くは専門のクリーニングや手入れが必要です。
また、着用後は正しい方法で畳むことが求められ、保管にも気を遣わなければなりません。湿気やカビの影響を受けやすいため、長期的に着物を美しく保つためには専用の保存方法を熟知し、定期的に手入れする必要があります。このように、維持管理の手間が増える点が洋服との大きな違いといえます。
まとめ
近年、ファッションの多様化が進む中で、着物を普段着として楽しむ人が増えています。しかし、着物ならではの「恥ずかしさ」や「難しさ」を感じる人も少なくありません。普段着にすることで、個性的な着こなしができ、体型を気にせずに楽しめるといったメリットがあります。一方で、動きづらさや着付けの手間、保管方法に気を遣う点はデメリットといえます。また、普段と違うスタイルが注目されやすく、人からの指摘や視線が気になることもあるでしょう。こうした点を理解しつつ、時代の風潮にとらわれず自分らしさを表現するスタイルとして、普段着の着物を新たなファッションとして楽しんでみてはいかがでしょうか。