魚柄は子孫繁栄の意味がある吉祥文様!種類ごとに込められた意味とは
着物の美しい文様や柄には、それぞれの想いや古くから伝わる由来などといったさまざまな意味があります。今回は「魚」の文様について紹介します。魚は中国で、「ユィ」と発音するのですが、有余(=有り余る)と同じ発音から、幸福を意味する縁起ものとして取り扱われています。また、魚は卵をたくさん産むため、子孫繁栄の文様でもあります。
魚文(うおもん)
中国が初めとして、魚の文様が縁起のよいものとして伝わってきました。中国では、釈迦の足裏に、双魚という向かい合う魚の文様が刻まれています。それだけ縁起のよい文様です。
着物の魚文
魚文とは、魚を文様化した総称です。魚が単独で用いられることもありますが、群れで描かれていたり、波や波紋のような水模様と共に描かれていたりすることがあります。
魚文の歴史
鎌倉時代に、中国から伝わります。中国では、急流で名高い黄河の竜門を超えると、のちに龍になれるといわれているのです。出世のシンボルであり、登竜門の語源です。中国から日本へと登竜門が伝わり、鯉が出世魚として広まっていきます。
また、魚はたくさんの卵を産卵します。子孫繁栄を強く願われた昔だからこそ、尊重された柄なのでしょう。そこから鯉は、着物などのお祝いごとのデザインに用いられるようになりました。
鯉(こい)
吉祥文様に用いられている鯉は、縁起がよいとされています。通年を通して着用できるデザインです。鯉と水模様を組み合わせた涼しげな印象を与えるデザインもあり、夏の風物詩として、描かれているものは夏の着物や浴衣によく用いられています。
鯉の文様が示す意味とは
着物や浴衣の文様に、優雅に泳いでいる鯉の姿が描かれています。優雅な姿はとても美しいデザインで、涼しげな雰囲気から感じられる清涼効果も発揮されるのです。反対に、滝を登る勇ましい姿の鯉が描かれている着物があります。
お宮参りや成人式、結婚式などの門出で、着用する男性の着物や袴をよく見かけます。龍や虎、鷹とならび、鯉のデザインが多いのは、鯉が示す意味が、強い傾向にあるからです。鯉は出世魚として扱われています。力強く登る鯉のように、飛躍してほしいという家族などの想いを文様として表現されているのです。
鯉はなぜシンボルなのか
鯉は、ほかにも象徴とされている理由があります。魚類の中でも長寿の鯉は、20年ほど生きます。なかには70年も生きる鯉もいます。昔は医療も発展していなかったため、鶴や亀のように不老不死の生き物として、縁起のよい生き物でした。
そのため、民間療法として生き血を飲むことがあり、滋養として食されることがありました。また、大きく口を開けてエサを吸い込んで食べるその姿には、かなりのインパクトがあります。そこから、財運を招き金運が上がる魚として有名になったのです。
めだか
めだかは、日本で昔から親しまれている小さな淡水魚です。めだかも吉祥文様として有名な柄なのです。単体で描かれることはありませんが、水紋や水草、複合体で表現されています。
めだかの歴史や意味
めだかは1800年前後から、観賞用として飼育されるようになりました。水には気を集める水龍(すいりゅう)という性質があると伝えられています。住んでいる地域の近くに川などの水流があると、よいエネルギーが流れやすくなり、その地域は恵まれると信じられてきました。水流がない地域でも、家でめだかを飼育することによって、風水の効果によって運気がアップすると言われています。
めだかの運気は、色によって違い、白や黄、金は金運が上昇する、黒は邪気を吸収してくれるといった効果を発揮し、「小さな幸せ」を運ぶ魚としても各地に広まっていきました。以降、愛らしく泳ぐ姿や運気が上昇するという意味でも、着物の文様として用いられるようになったのです。
荒磯文(ありそもん)
波間を踊る鯉の姿を表現した文様のことを、「荒磯文(ありそもん)」もしくは「あらいそ」といいます。荒波が打ち寄せる波を表現した模様に、飛躍する鯉を掛け合わせた文様です。中国から室町時代に渡来した名物裂(めいぶつぎれ)になります。もともとは、染織で有名な模様でした。
荒磯裂には3種類
荒磯裂には3種類あります。1つは、緞子(どんす)と呼ばれる柄です。萌葱(ネギのようなやや黄色みを帯びた緑色)に波文を並列させた模様の上に、黄茶色の鯉を均等に並べたものをいいます。2・3つ目は金襴(きんらん)と銀襴(ぎんらん)です。金や銀の糸を用いて模様を織り出したもので、紺の生地に金糸や銀糸で鯉や荒波を縫った模様です。
荒磯文には他にもある
荒磯文には鯉だけではありません。激しい波が打ち寄せる荒磯に、岩や千鳥、松などの模様をあしらったものもあります。
まとめ
魚柄には、子孫繁栄や飛躍の願い、長寿、金運などのおめでたい柄であることがわかりました。反対に、不祝儀には不向きなため、配慮しなければなりません。魚柄は、愛らしく涼しげな雰囲気から夏物として着用されるもの、年中通して使用できるもの、行事などの祝い事で着用される迫力ある柄までと多種多様です。花柄や無地もよいですが、あえて魚柄を選択して運気を高めてはいかがでしょうか。