米沢紬とはどんな織物？老若男女に人気の紬織物についてご紹介！
紅花のふるさと山形に、優しい風合いに気品が漂う素敵な着物があります。先染めで色をつけ、伝統的手法で織られた塩沢紬、あなたは袖を通したことがあるでしょうか？紬は庶民の着物として生まれましたが、今では貴重な伝統工芸品として高い評価を受けています。ここでは人々から長く愛された米沢紬の魅力を紹介しましょう。
米沢紬は山形県を代表する紬織物
米沢紬は山形県米沢市を産地とする紬織物です。長井町を中心に生産されたので、長井紬とも呼ばれます。山形の名産織物、白鷹紬、白鷹御召を合わせて置賜紬と呼ぶ場合もあるようです。
紬とは繭や綿を紡いで糸にした紬糸を、反物に織り上げて作った着物を指します。糸に撚りをかけて紡いでいくので、とても丈夫な布地に仕上がるのです。山形県を代表する織物、米沢紬に合う帯、活用するシーンや特徴を紹介します。
米沢紬に合わせる帯
「織の着物に染めの帯」の言葉通り、織の米沢紬には柄をあとから描いた染め帯を合わせます。米沢紬の優しい風合いを生かすため、色柄を多く描き込んだものは避けた方がよいようです。帯締め、帯揚げは好みの色柄を選び、はっきりとした色合いが米沢紬のさわやかさを引き立てます。
米沢紬の活用シーン
紬は庶民の着物として発生したので、冠婚葬祭の場で正装として着ることはできません。その分遊び心を発揮できる着物ですから、観劇、コンサート、食事会や簡単なお茶会など趣味のお出かけにぴったりです。
雪国で作られた米沢紬は着るととても暖かい着物となっています。温暖化の影響が気になる人は、単衣仕立てにしておくとよいですね。
米沢紬、長く着られる
見た目の繊細な美しさに反して、米沢紬はとても丈夫な着物です。充分に着回し、きちんと手入れをして、お子さん、お孫さんに着てもらいましょう。
米沢紬は優しい風合いが特徴で、着る人の年齢性別を選びません。老若男女の区別なく、愛用する人が多くいます。山形にルーツを持つ人は米沢紬を保有していると、地元への愛着、アイデンティティにつながるでしょう。
自然の魅力が生み出した米沢紬の特徴
米沢紬は天然染料が生み出した独特の風合いが特徴です。先に糸を染めてから織り上げる先染めの織物であり、染料には特産品の紅花を使ったものが着物愛好家に人気があります。天然染料が染め出した無限の色を織り合わせて、縞を彩り、この世にただ一つの織物となるのです。
先染めにより生み出される絣模様が沖縄琉球の紬に似ているので、米沢琉球紬、米紬と呼ばれることもあります。米沢紬は紅花や藍で染められ、先染めでしかできない独特の柄を織りだすのです。
自然の中に育ち、自然の中で収穫された天然染料は、合成染料には決して真似できない、ふわりとした優しい風合いを持っています。自然の生み出す不思議なマジックですね。
しかし天然染料は生産に大変な手間と時間がかかり、増産が見込めない素材です。紅花は山形を、というより日本を代表する天然染料ですが、明治を境に生産する農家が急激に減少しました。
今では生産組合が組織され、農業機械を導入するなどして、保存と継承に懸命な努力がされています。米沢紬を着ることは美しい伝統工芸品を身にまとうだけでなく、自然の中で育った染料を大切に使い、後世へ残していくという意味も持っているのです。
米沢紬の歴史に関わる9代目米沢藩主・上杉鷹山
米沢紬の歴史は米沢藩9代目藩主、上杉鷹山を抜きにしては語れません。上杉鷹山は江戸時代中期に生まれ、明和4年、出羽国米沢藩上杉家の家督を継ぎます。当時の米沢の民衆は度重なる水害に苦しめられていました。
上杉鷹山が藩主となる前から、米沢藩は次々と減封を受け、所領は減る一方、藩財政は大いにひっ迫していた状況です。財政を立て直し、凶作にあえぐ農民を救うため、上杉鷹山は米沢の織物を産業として発展させます。米沢紬は上杉鷹山による藩政改革の一環だったのです。
上杉鷹山は養蚕に力を入れ、絹糸の生産量を増やしました。藩内の婦女子には機織りを習得させます。天然染料である紅花や藍、紫紺を栽培し、蚕のエサ桑もたくさん生産されました。
昭和期まで山形の農家は屋根裏に蚕部屋があり、良質な絹を生産していたようです。農家では蚕を何よりも大切にし、お蚕さんと呼んで丁寧に世話していました。
上杉鷹山の織物産業政策は農民たちの努力により成功を遂げます。関西から職人を呼び、先染めの技術が米沢に根付いたのです。上杉鷹山と領民が作り上げた織物は米沢織と呼ばれ、山形の特産品となります。
米沢紬によって貧困にあえいでいた米沢の領民は救われました。米沢紬は上杉鷹山が生み出し、米沢の領民が高級品に仕立てあげた逸品です。今では丈夫で美しい織物として、全国に広まり、海外でも高い評価を受けています。
まとめ
米沢紬とは山形県米沢市を産地とする紬織物です。絹で織られたものと綿で織られたものがあり、丈夫な紬織で作られているので長く着られる着物といわれています。紅花など自然染料を使った染めに人気があるようです。
自然染料で染めた着物は合成染料にはない、独特の優しい風合いを持つ伝統工芸品となります。自然染料は栽培が難しく、生産量は激減しました。米沢紬には染め帯を合わせ、観劇やコンサート、食事会など気軽な外出に着用しましょう。
