阿波正藍しじら織とは?現在も用いられている織物の魅力とは
今回の記事では、徳島県で生産される日本の伝統産業「阿波正藍しじら織」を紹介していきます。しじら織の技法は、偶然によって生まれました。そういった始まりのきっかけやしじら織の特徴、どのような商品に活用されているかなどを説明していきます。この記事を読むことで、しじら織がなぜ現在も親しまれ続けているのかを理解できます。
阿波正藍しじら織(あわしょうあいしじらおり)とは
阿波正藍しじら織とは、徳島県徳島市で生産される綿織物です。阿波正藍しじら織の「しじら」は、織物の表面にできる細かいしわやしぼのことをいいます。この細かいしぼが、阿波正藍しじら織の大きな特徴です。このしぼがあることで、生地に凹凸が生まれ、軽さと肌触りのよさを実現してくれます。また凹凸があることで、肌にべったりとくっつかず、夏場にぴったりの素材とも言えるでしょう。
また阿波正藍しじら織は、独特の香りをもっています。この独特の香りは、防虫効果を持っており、このことも虫が多い夏場に着用をおすすめする一つの特徴です。また阿波正藍しじら織は、1987年に経済産業大臣指定の伝統工芸品に選ばれました。阿波正藍しじら織が放つ独特で鮮やかな藍色は、シャンパンブルーと呼ばれています。この藍色を表現するには、多くの手前と時間が必要です。
その生産工程では、一度の染色で濃い藍色になってしまわないように、染色して、絞って、乾かすという作業を何度も繰り返します。そして30回水洗いをすることで、その独自の風合いと色を実現します。この水洗いが、シャンパンブルーと呼ばれる深みのある藍色を出すための秘訣です。
偶然発見したしじら織技法の歴史
阿波正藍しじら織は、1986年から生産が開始されたと言われています。このしじら織という技術の創始者は、現在の徳島市安宅にあたる、当時阿波国名東群安宅村と呼ばれていた地域に住む海部ハナです。しじら織の技法は、偶然によって生まれました。
ある日、海部さんは、当時地域で流行していた木綿織物「たたえ縞」を外で干していました。するとにわか雨が降ってきて、その木綿織物が濡れて、縮んでしまったのです。これが阿波正藍しじら織の始まりです。海部さんは、雨に濡れ縮んでしまった木綿織物の独特の風合いに魅力を感じ、それを意図して生産できないかと研究を重ねました。
海部さんは、熱心な研究の末、経糸の左右の張力差を活用することで、しじら織独特の表面の凹凸を生めることを、発見しました。この阿波正藍しじら織は、安価な木綿で生産できたため、庶民のあいだで流行していきます。涼しく、夏場でも肌にべったりとくっつかず着用できるため、普段着として親しまれました。
また阿波正藍しじら織の流行を後押しした一つの要因として、阿波国の当時の藩主蜂須賀氏が藍の栽培を強く推奨していたことも挙げられるでしょう。当時の阿波国は、全国で生産される藍の1/4を生産していたといわれています。そして阿波国の藍産業自体は次第に衰退していきますが、阿波正藍しじら織は、気軽に着用できる普段着として、衰退することなく残り続けていきます。現在も日本が誇る伝統産業として、親しまれています。
現在でも着物や浴衣に使われている
ここからは阿波正藍しじら織が現在、どのように活用されているのかを紹介していきましょう。阿波正藍しじら織は、現在でも夏から秋にかけて着用できる着物や浴衣として使用されています。着物や浴衣に加えて、より身近に阿波正藍しじら織を味わってもらえるようにと、阿波正藍しじら織を活用した様々な商品が発売されています。
例えば、ネクタイやハンカチです。その他には、ランチョンマットやタペストリーなどのインテリアも作られるようになりました。最後に阿波正藍しじら織のお手入れ方法について紹介していきましょう。阿波正藍しじら織の生地は、他の生地と比べて丈夫で、洗ったとしても縮みにくいと言われています。
傷みにくい生地ではありますが、長く使用するには手洗いが一番おすすめです。また阿波正藍しじら織は、洗うと色落ちする可能性が非常に高い衣類です。藍染のジーンズなどもそうですが、白色の衣類などと一緒に洗濯すると、色写りしてしまう可能性があるため、洗濯は分けて実施しましょう。また阿波正藍しじら織の最大の特徴である表面のしぼを崩さないために、アイロンがけは控えることをおすすめします。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回の記事では、現在も徳島を中心に生産が続けられる日本の伝統産業「阿波正藍しじら織」を紹介していきました。表面の凹凸が生む、さらっと軽い着心地に加え、何度も同じ工程を繰り返すことで表現されるシャンパンブルーが魅力の木綿織物でした。夏に着用することで、涼しげながらも、上品な印象を演出してくれること間違いないでしょう。また着物だけではなく、近年ではネクタイやシャツ、ハンカチなど、身近に取り入れやすい商品も販売されています。いきなり着物や浴衣を購入することはハードルが高いという人は、まずそういった商品から取り入れてみるのもいいのではないでしょうか。