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落ち着いた美しさが魅力の名古屋友禅!その受け継がれてきた技法とは

公開日:2022/11/15  


京都友禅や加賀友禅のほかにも名古屋に友禅があるのをご存じですか。友禅と聞くと京都や加賀を思い浮かべる人も多いと思います。しかし、名古屋にも伝統工芸品に指定されて名の知れた美しい品質と匠の技が光る名古屋友禅が存在するのです。今回は絹織物の産地でもあった尾張に受け継がれた染めの着物、友禅について解説します。

名古屋の独特な技法で作られる名古屋友禅

愛知県で作られる名古屋友禅の特徴は、煌びやかな京友禅や雅やかな加賀友禅とは異なり、淡色濃淡で古典的な絵柄と渋く落ち着いた美しさが魅力です。そして、京友禅や加賀友禅とは異なる独特な技法を各工程で使用し、さらに名古屋友禅の魅力を引き出してくれます。

一貫した作業工程

京友禅ではいろんな職人が工程を分業する分業制が取り入れていますが、名古屋友禅は図案から下絵、糊置に色挿、仕上げまで1人の友禅作家が一貫して製作します。一品手作りの製法が取り入れられているのです。

樹光染

生地の上に乗せた草木の上からロウをふり、草木の形を写し取る独自の染色技法です。自然の草木を使用するので立体的な生きた美しい絵柄が伝わってきます。長年の技術が必要といえる技法でもありますね。

古くから受け継がれてきた名古屋友禅の歴史

約300年もの歴史が残る名古屋の友禅ですが、1983年になるまで全国へは知らず長い無名状態が続いていました。では長い歴史を簡単に解説します。

時代の流れと共に変化した名古屋友禅

名古屋友禅が誕生したのは1700年の初期、尾張文化が華やかで国々との交流も盛んだった頃が起源だとされています。尾張地域が日本列島の真ん中にあたる場所でもあり、当時は東西からさまざまな職人が往来していました。その中には京都や江戸から来ていた友禅師も大勢いて、尾張の職人へと友禅の技法が伝わっていきます。

しかし、時代が変わって華やかな尾張文化の時代は終わりを迎えました。尾張藩主であった徳川宗治の失脚とともに質素倹約の気風が強くなれば、徐々に華やかだった名古屋友禅への影響も出始めます。模様の配色から色数など華やかさを控えた渋い友禅へと変化していったのです。

名古屋友禅が誕生するまで

昔から続いている名古屋友禅の技法は現在へしっかりと長く受け継がれているのに、名古屋友禅の名称が知れ渡るようになったのは1983年の頃でした。正式に名古屋友禅としてスタートは少し前なのです。それまでの名古屋友禅は京都へ卸され、京友禅として全国へ流通されていたため、名古屋友禅は全国でもあまり知られていなかったのです。

そして1983年に変化があります。愛知県の友禅工芸、誂染色、染加工業協同組合3者が合同で新しい名古屋友禅黒紋付協同組合連合会を発足させます。その結果、愛知県から伝統工芸品と認定され、名古屋友禅は全国の地で知られるようになったのです。現在は9名の伝統工芸士が登録しています。

美しさと味わい深さを引き出す名古屋友禅の技法

友禅には、手描き友禅と型友禅の技法があります。名古屋でも同様の技法で製作されるのですが、どちらの工程にも名古屋独特の技が使われています。

手描き友禅

手描き友禅は、友禅が始まった頃から続く技法で生地に筆で下絵を描く工程を指し、名古屋では下絵の際に、仮縫いした絹の白生地へ露草の液を使った青花液を使用して描いていきます。青花液の水で洗うと落ちる性質を利用した技法なのです。

また、下絵の裏側からは色同士が混ざり合うのを防ぐため、下絵の線に沿って模様すべてに糊を埋めていき、色同士の混ざり合いを防ぎます。模様すべてに糊を埋め終われば、糊の乾燥やほかの生地へ糊の付着を防ぐため、おがくずやぬかを振りかけておきます。これらの工程はすべて長い年月をかけたからこそ生まれた名古屋独特の技法なのです。

型友禅

型友禅は、下絵の代わりに友禅模様を型彫りした型紙を使用する技法になります。生地の上に型紙を置き、型の上から染料にもち米と米ぬかを混ぜ合わせた色糊を置いてヘラで絵柄を付けていく技法です。そのため模様がズレないように移動させるのには、長年の技術が必要になるのです。

名古屋友禅では下絵に使用する型紙に、三重県鈴鹿市で作られた伊勢型紙を使用します。色ごとに型紙が必要となるため、一着に100枚以上の型紙が必要になる場合もあるのには驚きです。

名古屋黒紋付染

黒紋付染の始まりは1610年頃、尾張藩士であった小坂井新左衛門が藩内の旗やのぼりなど染織品の製造にあたったのが始まりとされています。その後生み出されたのが2つの染色方法です。浸染は、生地の両面から紋型紙を使用して染める技法です。金網を当てたまま薄めの染液で時間をかけて染め上げるのでしっかり染まります。引染は、紋の部分に防染糊を伏せて高温の染液で時間をかけて染めるので深く艶のある黒色になります。

まとめ

愛知県には伝統工芸品にも指定された名古屋友禅の技法が現在もなお受け継がれています。京都や加賀とは異なり、落ち着きや渋さのある淡色濃淡で、古典的なものが特徴なのは、昔からの堅実で実直な土地柄からともいえるでしょう。熟練された技巧が美しい名古屋友禅を作り上げるのです。しかし、300年もの長い歴史があり伝統工芸品としても認められる名古屋友禅ですが、現在は後継者不足の問題も発生しています。受け継がれた技法が途絶えることなく、今後も受け継がれるよう願いたいものです。

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