直衣と衣冠は同じもの?昔の上流貴族の普段着をご紹介!
日本の歴史上の衣服を見ると、さまざまなものが登場しますが、直衣は歴史の教科書や博物館などで見たことがある人が多いのではないでしょうか。長い烏帽子やゆったりとしたシルエットが印象的で源氏物語の中にも登場するので、歴史ドラマで見覚えがある方もいるかもしれませんね。今回は、直衣がどんなものなのかについて解説します。
直衣(のうし・なおし)とは
直衣とはどのような衣服なのでしょうか?成り立ちや特徴、時代背景などを解説します。
直衣の成り立ち
直衣とは、字が表すとおり「直(ただ)の衣」で、上流貴族の男性が使用する普段着として用いられた衣服でした。平安時代に成り立ったもので、烏帽子を頭につけた姿が特徴的で教科書で見たことがある方も多いはず。
絵巻物を見ると、直衣姿でくつろいだり、遊びに興じたりする姿が残されています。出衣といって衣を長く出してお洒落を楽しんだり、色や柄が自由だったりと、身分によって色が決まっていた束帯や衣冠とは違い、直衣は衣服を楽しむ面を持った自由度のあるものでした。
直衣と衣冠の違い
直衣と衣冠の違いについて解説します。直衣と衣冠の一番の違いは、頭に乗せるものです。衣冠は冠をつけていましたが、直衣は烏帽子をつけていました。しかし直衣は普段着なので、直衣で宮中に参内する時は冠をつける決まりになっていました。
また、衣冠は勤務服としての側面が大きく、衣の色や柄は身分によって決まりがありましたが、直衣は普段着のため色や柄は自由がきくところがあるのも大きな違いです。
直衣の構成
直衣の構成はどのようになっていたのでしょうか?直衣の構成について解説します。
直衣の構成とは
宿直は小袖、単、指貫、袍で構成されています。頭には、烏帽子か冠をつけました。直衣の構成は衣冠とあまり変わりませんが、袍の色や柄が自由なところが大きく異なる点です。束帯の時代の袍は位袍と呼ばれ身分を表すものとして着られましたが、直衣の時に着る袍は雑袍と呼ばれ区別されました。
直衣は衣を袍の下に出して着るなどしてお洒落の一種として出衣と呼ばれる着方をするなど、着方や色目は自由でした。また、宮中に参内する際は冠を着用しましたが、直衣布袴といって公儀の際には下襲を着用しフォーマル感を高めていたようです。
直衣はいつ着たのか?
貴族の普段着といっても、直衣を着ることのできた着用層は限定的だったようです。宮中に参内する時は、烏帽子ではなく冠をつける必要がありました。また、冠をつけての直衣での参内には、勅許が必要であり、公家以上の身分の者が許されていました。
また、普段着として使用された直衣ですが、普段の使用にも勅許が必要だったという一説があったり、五位の身分の者は勅許なしで使用できたとする文献があったりと諸説あります。現代では天皇即位、成婚の際には束帯や十二単、神事などでは衣冠が用いられますが、宿直は普段着に近いため、あまり神事や催事で用いられる機会はありません。
直衣の色
束帯や衣冠の時に着用される袍は、身分によって色分けされていました。一方宿直は色や柄は自由。直衣で参内が許可されるものは、身分が高く、天皇に近い身分の者や親しい者などに限られました。
「源氏物語絵巻」では、明るい桜襲の直衣が登場しています。鮮やかな直衣や華やかな直衣は、身分の高いものから、低いほかの者へのステータス誇示にもなったことでしょう。しかし摂政期ごろから、直衣が参内にも着用されるようになると、自由すぎると示しがつかなくなるため、ある程度の色や文様が固定化されていきました。
直衣の着付け方
直衣はどのように着付けるのでしょうか?直衣の着付け方について解説します。
直衣の着る順序
直衣は、束帯、衣冠へと移り変わり、普段着として着られていたので、簡素化された衣服です。束帯を簡素化した衣冠とあまり変わりありません。小袖、冠、指貫、袍の順番で着用しました。
直衣の着付け
まずは小袖を着て、帯で結びます。次に単です。単は布地が大きいので、衣紋襞と呼ばれる襞を前後につくりました。単を着用したら、指貫を履き、袍を着たらできあがりです。直衣は出衣でお洒落にアレンジしたり、公儀の際には下襲をはいて裾を引きずるスタイルにしたりと、場合に応じてさまざまな着方ができたようです。
まとめ
長い黒の烏帽子姿が特徴的な直衣は、歴史ドラマで目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。現代の婚儀で用いられる十二単や束帯よりカジュアルな衣服になるので、婚儀や神事などで目にする機会は少ないかもしれません。そのため、直衣の着付けをしてみたいと思ったら、十二単や束帯、狩衣などの装束の着付けを幅広く行っている衣紋道を取り扱う教室を探すのがおすすめです。
十二単や束帯の着付けとは違い、直衣の着付けはブライダル関係の仕事には直結する可能性は低いですが、幅広い着付けの知識や技術を身につければ、歴史関係の仕事につながる可能性があります。また、源氏物語付近の造詣を深めたい方が、趣味教養を深めるために着付けを習うのもよいでしょう。直衣の歴史や着付けを学ぶことで雅な貴族の世界に触れてみるのもおすすめです。