几帳柄の着物にはどんな意味がある?年中着ても問題ないって本当?
着物の文様には四季を意識したものが多く、それぞれの季節を感じる柄が取り入れられています。しかし着物の柄には有職柄や吉祥柄など季節に関係なく描かれる柄もあるのです。ここでは几帳柄につて詳しく解説します。几帳柄がどのようなものか几帳柄の着物を着るときがいつかということが理解できるでしょう。
そもそも几帳柄とは
几帳柄とは、提案貴族が使用していた几帳を着物や帯などに描いたものを指します。
几帳について参考
几帳とは、平安時代に貴族が住む寝殿造りの室内で使う調度品の一種で、布製の可動式衝立のことです。パーテーションのような使い方で、置き型のカーテンのような感じです。部屋の間仕切りや女性の傍らに置いて目隠しや風よけとして使用されました。人だけではなく荷物なども見苦しくないよう几帳で隠しました。
また、室内だけではなく、参拝の折にも衆目からの障壁としても使われたのです。2本の柱に横木をT字に渡してそこに薄絹の帳を垂らしたものです。平安貴族が使っていた几帳を着物に描いたものを几帳柄といいます。几帳は調度品なので生活道具などを柄にした器物文様の一つということになります。
几帳そのものは季節に関係ない柄なので通年使用できますが、几帳はほかのものと描かれることがよくあるのです。一緒に描かれるものによっては季節が限定されることがあります。ちなみに、きちんとしていることを几帳面といいますが、几帳面とは几帳の柱を丸く削り両側に刻み目を入れたものをいいます。
几帳と組み合わされることが多い柄
几帳柄は、源氏物語絵巻などに見られる雅な柄で、几帳が風に揺れている様子を着物の柄に用いられるのです。几帳の布を帷子といいますが、帷子は年中同じものではなく、夏は生絹に花鳥柄、冬は綾絹に朽木形柄の帷子というように季節によって使い分けられました。
朽木形柄とは、朽ちた木や板を縦菱形に文様化したもので、現代でも神社の帳には朽木形柄が用いられています。また、着物の地紋などにも使われます。朽木形柄と組み合わされる柄は有職文様が多く使用されているのです。着物に描かれるときに几帳と組み合わされる柄は主に次のようなものがあります。
四季草花柄
牡丹や桜、梅など春夏秋冬の草花が描かれている柄は、几帳柄と組み合わされることが多く、どの季節にも着られる柄です。
檜扇
檜扇は、檜の薄板を重ねとじた扇のことで、雅な王朝文化が金銀泥などで美しく描かれた平安貴族の女性の装身具です。檜扇の柄は松竹梅や鶴亀が描かれますが、着物に描かれる檜扇は花などが描かれます。
松柄
松は、寒い冬でも緑を保つことから長寿の象徴であり、平安時代から格調高い柄として描かれてきました。
几帳と関連する着物の柄
器物文様
調度品や楽器、遊具、武具、宗教具など扇やなどあらゆる道具類や生活用具を文様にしたものを器物文様といいます。江戸時代には友禅染で絵画的な文様が描けるようになり、器物文様が広がりました。
源氏物語柄
源氏物語は平安時代に紫式部によって執筆された物語です。着物の柄に描かれる源氏物語には、源氏物語の中の場面を物語のように表現したものと、特定の巻を暗示的なモチーフで表現したものの2種類のパターンがあります。
現在、用いられているものは、主に暗示的なモチーフで表現される源氏物語で、パターン化されているものがあります。たとえば、夕顔は、夕顔と扇、野分は、虫かごと秋草などです。また、源氏香という香合せの名前の柄があります。
朽木形柄
朽木は朽ちた板や木のことで、縦に長い菱形に文様化したものです。几帳や壁代に用いられました。壁代は御簾の内側に掛けた帳のことです。
御簾柄
御簾は、寝殿造りの庇に下げる簾のことで、貴人を敬い、簾を丁寧な言い方にしたものです。牛車にも使われました。細くした竹を編み、縁には緞子などの美しい布が使われました。江戸時代以降、几帳や檜扇などとともに王朝文化を象徴するモチーフとして描かれます。
有職文様
有職文様は、平安時代以降、公家階級で装束や調度、輿車、建築内装などに用いられてきた伝統的な文様です。ほかの文様と区別するために近年以降、有職文様といわれて、現在の和風文様や家紋のデザインの基にもなって受け継がれています。有職文様の起源は古代文様といい、大陸から伝わった古代オリエントが発祥といわれています。
長い年月をかけて、地域や民族の影響を受けながら、形を変え、バリエーションを増やしつつ世界各地へ伝播していったといわれるのです。有職文様は連続文様や定型文様が多く、主なものには、七宝や鳥襷、向蝶、木瓜、小葵、立涌、青海波、菱、向鶴、八つ藤の丸などがあります。
まとめ
几帳柄は、平安貴族が使っていた調度品の一種で部屋の間仕切りとして使う几帳が着物の柄として描かれたものです。几帳は、調度品の一種なので、季節に関係なく通年着られる柄です。