付け下げとはどんな着物?着物初心者におすすめの理由とは
結婚や出産を機に自分の着物が欲しいと考える人は案外多いのではないでしょうか。しかし、着物に詳しくない初心者はどのような着物がよいのか迷うでしょう。これから仕立てる大切な1着を失敗しないために、初めての着物は付け下げにすることをおすすめします。付け下げという着物のことを知ると、付け下げをすすめる理由が理解できるでしょう。
付け下げとは
付け下げは振袖や訪問着のように着物の種類で、格の高さは訪問着と同じです。格とは、着物を着るときの決まりごとのことで同席する相手や周りへの配慮でもあります。この格付けのややこしさが着物を敬遠する原因の一つになっています。しかし、付け下げは大昔からある着物ではなく、都合によりできた比較的新しい着物なので着用範囲が広いという特徴があるのです。
付け下げの歴史
付け下げは訪問着の存在によって誕生したので、訪問着のことを知ると納得がいくと思います。訪問着は大正時代のはじめのころにできた着物です。それまでは礼装で着る留袖か普段着の小紋しかありませんでした。その間のいわゆるよそゆきのような役割は、小紋に一つ紋を付けることや小紋の上に羽織を着ることで格上げして補っていました。そのよそゆきの役割を果たすために訪問着ができたのです。
訪問着は、留袖や振袖に次ぐ準礼装からあまり改まらないカジュアル寄りのものまで幅広くデザインも豊富にあります。一枚の絵のように縫い目に関係なく柄がつながっている絵羽模様が特徴で、豪華で華やかなものが多い着物です。しかし、戦時中に贅沢が禁止になったときに訪問着も禁止されました。そこで、それに準じる控えめな付け下げが生まれたというわけです。
付け下げの特徴
付け下げは訪問着に準じる着物として生まれたのでフォーマルの席にふさわしい着物です。柄が控えめなのも特徴で、合わせる帯次第でフォーマルからカジュアルまで着られるオールマイティな着物です。
たとえば、金地や銀地の入ったおめでたい古典柄の袋帯などを合わせると式典や結婚披露宴の席にふさわしい装いになり、名古屋帯を合わせて食事会などに参加してもしっくりきます。また、付け下げは年齢や未婚、既婚にも関係なく着ることができる着物です。
付け下げと訪問着の見分け方
着物が仕上がった状態で付け下げと訪問着を見分けるのはけっこう難しいかも知れません。見分ける目安は、華やかで豪華なのが訪問着で控えめな柄が付け下げですが、近年ではそれが逆の場合もあります。
訪問着の特徴は、縫い目に関係なく柄がつながり一枚の絵のようになっている絵羽模様です。衿や肩も柄がつながっているものがほとんどです。訪問着は柄をつなげるため、白地を仮に縫って下絵を描き、解いて柄を描き染めて再び縫うという行程があります。
付け下げは反物に柄付けを計算して染色するので訪問着のように柄がつながりません。しかし近年は、付け下げのように反物から仕立て、訪問着のように裾がつながっている付け下げ訪問着という着物が存在するので、さらにややこしくなっています。しかし着物店での販売時の状態を見れば一目瞭然です。訪問着は着物のかたちになって仮縫い状態で販売されています。いっぽう付け下げは反物で売られています。
付け下げと色無地の違い
色無地も着用範囲が広い着物です。付け下げとの違いを比較します。
色無地とは
色無地は白と黒以外の一色で染めた着物です。柄がなく一色なので見た目はとてもシンプルです。織りで表す地紋があるとフォーマル感がアップします。紋の数により着物の格付けが異なります。五つ紋や三つ紋にすると格が上がりすぎるので使い勝手がいい一つ紋がおすすめです。
紋を一つ入れることで訪問着や付け下げと同格になりフォーマルとして使えます。袋帯を合わせて結婚披露宴などのフォーマルの場、名古屋帯をすれば食事会や街着などカジュアルに使えます。お茶会にも適しているのです。
付け下げとの違い
付け下げは訪問着の代用として生まれた着物なので、結婚披露宴などおめでたい席で着る着物です。訪問着や付け下げにはない色無地の最大の特徴は、慶事以外でも使えるという点です。紺やグレーなど暗めの色無地なら喪服用の黒帯を付けることで、通夜や法事にも使えます。
付け下げが着物初心者におすすめの理由
着物初心者にすすめる理由はおもに3つあります。
幅広いシーンで使える訪問着と色無地のいいとこ取り
付け下げは訪問着と色無地のいいところを兼ね備えた着物です。訪問着のように華やかすぎないので、子どもが主役の行事に付き添いとして丁度よいのです。無地の部分が多いので控えめに装うことができて、模様があることで華やかにも装うことができます。そのうえ帯や小物しだいでフォーマルにもカジュアルにも対応可能です。つまり帯で格付けを上げたり下げたりして幅広く使えるということです。
コストパフォーマンスがよい
付け下げは訪問着の作業工程が簡略化され、反物の状態で柄付けや染めが行われるため訪問着よりはるかにリーズナブルな場合が多いでしょう。自分が納得して購入した付け下げが1着あると帯を替えてあらゆるシーンで使えるので、数回レンタル着物を利用することとあまり変わらないくらいです。
年齢にかかわらず着用できる
付け下げは年齢に関係なく長く着ることができる着物です。選ぶコツは飽きのこない古典柄で淡い色にすることです。しかし、好みの色や顔うつりがあるので、必ず試着してから決めることです。着物店では着物を着たときのように反物を合わせて試着してくれます。納得して仕立てると一生気持ちよく着ることができるでしょう。
まとめ
付け下げは控えめな柄付けだからこそ、帯や小物使いにより格を上げたり下げたりしてあらゆる場面で着用できる優れた着物です。改まった席から気軽な街着としてオシャレを楽しめるオールマイティな付け下げは、着物初心者に初めの1着としておすすめです。