八掛って何?着物をオシャレに着こなすために知っておきたいポイント
着物の用語は読み方が難しく意味も分かりにくいものがあります。八掛もその一つではないでしょうか。なぜ八という字が入っているのか八は何を指しているのか疑問に思うでしょう。ここでは着物の八掛について詳しく解説しています。八掛が着物を活かす大事な役目だということが理解できるでしょう。
八掛とは袷着物の裏地のこと
八掛は、袷の着物の裏地のことです。袷の着物は、秋から冬、翌春に着る着物です。着物の下半分に付ける裏地のことを八掛といいます。上半身の裏地は胴裏といいます。八掛は、下半分の裾の内側をぐるり一周するかたちになるため、裾回しともいうのです。
八掛の意味
八掛の八は何なのかというと、下半身の裏地が八枚のパーツからできているからです。上前と下前の衽、左右の前身頃、左右の後ろ身頃、上前と下前の衿先を合わせると8枚になります。袷の着物は、下半分の裏地を八枚のパーツに裁ち分けて用います。
現在の八掛は、ここに左右の袖口部分が加わるのが一般的です。以前は、袖口部分を八掛とは別の布が使用されていたのがほとんどでした。現在は八掛と同じ布を使用し、袖口のパーツも入れて八掛といいます。したがって、現在の八掛は、一般的には10枚のパーツからできていることになります。
八掛の役目
八掛の目的は、おもに、着物の保護と裾さばきをよくすることにあるのです。八掛を付けることにより、着物の表地がいたみにくくなり、裾さばきがよく歩きやすくなります。また、表地と裏地があることで、保温にもつながります。それから、着物の色との調和により、こだわりのオシャレになるのです。
八掛には種類がある
八掛には、着物によって裏地にする八掛が違ってきます。大きく分けると、八掛は5種類あります。
共八掛
共八掛は、表地と同じ生地の八掛のことです。主に訪問着や留袖などのフォーマルの着物に用います。表地と同じ生地の八掛を使うことで、風格のある印象の着物になります。
無地八掛
もっともポピュラーな八掛で、付け下げや小紋など、共八掛を使う着物以外のすべてに使用できるのです。ちなみに、付け下げや色無地は、セミフォーマルの席に使える着物なので、着物と同色か近い色にしておくと着て行くところが広くなります。それに対して小紋はカジュアル着なので、八掛を好みで選びます。
ぼかし八掛
ぼかし八掛は、白地に周辺のみをぼかしの色が付いているものです。ぼかし八掛は、主に淡い色の表地に用いられます。それは、淡い色の表地は八掛の色が透けて表地に影響する可能性があるからです
柄八掛
柄八掛には2種類あり、小紋柄のように全体に模様があるものと、上前の裏にワンポイントがあるものです。全体に模様がある八掛は、主に色無地や飛び柄の着物に用います。上前の裏にワンポイントがある八掛は、付け下げなどに用いられます。表地とつながりのあるものや連想するようなものが描かれてある場合と、表地との関係はないものの美しい花などの場合があります。
上前の裏にワンポイント柄があることで、正座から立ち上がるときや歩くとき、八掛が少し翻る際にちらっと見えることでオシャレ度がぐっと上がるのです。
紬八掛
紬八掛は、紬の着物に用いられます。ほかの八掛と圧倒的に違うところは、紬八掛は先染めということです。しかし、紬八掛はほかの八掛と比べると滑りがよくないため、ほかの着物に使うような八掛を付けることがあります。
着物をよりオシャレに着こなすためには八掛にも注目しよう
八掛は、じっとしていると、裾にほんの少し見えるだけです。手を動かすと袖口から少しと、歩いている際に、裏返る八掛の色が少し見えます。少し見えるから、八掛の色と着物の色の調和にはこだわる人がたくさんいます。
八掛にこだわる裏勝り
表地よりも、ほとんど見えない裏地を派手にすることを裏勝りというのです。これは、江戸時代に度々出された奢侈禁止令により贅沢を禁止され倹約を強制されたことへの挑戦ともいうべきもので、当時のオシャレへの美意識の高さが伺えます。八掛や長襦袢など、表に見えない部分を意識するのはオシャレで粋です。自分でこだわって選んだ八掛は、着物を着るときに気分が上がりますね。
着物を着るときやたたむときなど自分がよく目にするため、若い頃に仕立てた着物や譲り受けた着物なども八掛を取り換えると、まるで違う着物になります。
八掛の選び方
八掛を選ぶときは、着物や反物と八掛の色を実際に合わせて選ぶのが一番よい方法です。八掛は、着物の裾から1~2ミリほど見えるように仕立てるので、同じようにして選びます。
着物と八掛の色合わせの例をいくつか挙げると、
①八掛の色を着物の色と同系の色にする
②着物の色と同系で濃淡にする
③着物の一部分の色を八掛の色にする
④着物の色と反対色にする
⑤着物の色に関係なく自分のラッキーカラーにする
など、八掛の選び方次第で、まったく違う印象の着物になります。また、表地の色が淡い色の場合、濃い色の八掛を選ぶと透けてしまうことがあるのです。表地に影響するのが好ましくない場合は、淡い色の表地には淡い色の八掛のほうが無難です。
カジュアル着なら八掛以外の生地を使うことも可能
紬や小紋などのカジュアル着の場合は、必ずしも八掛の生地を使う必要がないので、薄地の長襦袢などで気に入った生地があれば、それを八掛の代わりに裏地として使うことも可能。そのように、普段着の着物は個性的な一着にして八掛の可能性を試す楽しさもあります。
まとめ
八掛は、着物の表地の保護や裾さばきのよさという機能面以外にもよさがあります。表からは少ししか見えませんが、そこをこだわるととてもオシャレです。着物と八掛の調和や、それだけではなく帯や帯揚げ、帯締めなど総合的な調和を見るのも着物のオシャレを楽しむことのひとつでしょう。