色留袖の着用シーンとは?押さえておきたい基本と訪問着との違い
結婚式に着物を着て行きたいけど、どれを選べばよいのか困ったことはありませんか?普段着物を着なれない人にとってはふさわしい場所が分からず、着物を着ることを断念してしまったり、間違えた装いになってしまったりします。この記事でしっかり確認して、ふさわしい装いをしましょう。
色留袖とは
色留袖と黒留袖の違いをご存じでしょうか。色だけではない格の違いがあるので説明します。
■黒留袖
既婚女性の第一礼装としてもっとも格式が高いのが黒留袖です。染め抜き日向の五つ紋が入り、衿、袖口、振り、裾回し部分に比翼といわれ下にもう1枚着物を着ているかのように仕立てます。染め抜きで五つ紋、比翼の3つが絶対条件で、なければ正礼装ではなく準式礼装になる可能性もあるので注意が必要です。黒字のちりめん生地で裾のみに模様が入ります。
主に結婚式や披露宴で新郎新婦の祖母や母、既婚者の姉妹が着る着物です。日向紋とは輪郭線も家紋の中も白くなっていて、家紋全体が白いもののことをいいます。輪郭や縁取りだけが白い家紋や刺繍は、元々の正式な家紋が輪郭だけの場合を除き略礼装の扱いになるのでこちらも注意が必要です。場所は基本的に背中、両肩、両胸の位置に家紋が入ります。結婚式の親族は参列してもらうゲストに礼をつくす意味合いを込めて、格式のもっとも高い黒留袖を着て迎えるのです。
■色留袖
既婚や未婚問わず着ることができる着物で、家紋の数によって黒留袖の次に格式の高い礼装になります。五つ紋では黒留袖と同じ正礼装になり、三つ紋では準礼装、一つ紋では略礼装の着物となります。第一礼装として着る場合は黒留袖と同じように五つ紋、比翼が付いている事が必要条件です。着物の色や柄の種類が多く、裾のみに絵羽模様といわれる柄が途切れる事なくひと続きになっている仕立て方法が使われています。
若い人はひざ上ほどまで大きな柄が入って明るい色留袖を選ぶと若々しく華やかでしょう。40~50代では裾模様が膝くらいまでのもので、薄い色や渋い色の花や亀、鶴などの模様が上品でよいのではないでしょうか。60~70代の方であれば裾模様が小さく、低い位置で吉兆柄や古典柄が上品で落ち着いた雰囲気になるでしょう。ご自身にあった柄や色を選ぶことが大切ですね。
色留袖のふさわしい着用シーン
■五つ紋
五つ紋の色留袖は格式の高い第一礼装なので、結婚式や披露宴の親族側、勲章授与式などの格式のあるパーティーがふさわしいといえます。紋の数や礼装の格に関してはいずれも主役である親族の装いに合わせることが必要です。昨今はホームパーティー形式の結婚式やガーデンパーティーなど平装の場合もあるので、主催の方に事前に確認をして装いを決めるとよいでしょう。
■三つ紋
背中、両袖に染め抜きの日向紋が入った着物です。準礼装ですので結婚式にゲストとしてお呼ばれした場合、五つ紋は格式が高すぎるため三つ紋の色留袖がふさわしいでしょう。ゲストがもっとも格式の高い五つ紋の色留袖で結婚式に参列することはルール違反となってしまううえ、親族と間違われてしまう可能性があるので注意が必要です。
■一つ紋、無紋
一つ紋は背中のみに家紋が入った着物です。略礼装としての扱いになるので初釜などの格式のあるお茶会には不向きです。イベントごとなどの格式のないお茶会や子どもの入学式、卒業式などの式典に向いている着物といえるでしょう。
色留袖と訪問着の違い
訪問着とは紋の数で準礼装や略式礼装の扱いになり、黒や色留袖の次に格式が高いとされる着物です。絵羽模様が肩から裾にかけて入っており、さまざまなシーンで着ることができる着物です。紋を入れることで格式が高くなりますが、着ることができるシーンが限られてしまうためあえて紋を入れないことも多いのです。結婚式のゲストやパーティー、七五三やお宮参りなどの行事ごとにふさわしい着物といえます。
若い人は大きめの柄や金があしらわれた華やかな柄、年齢を重ねたら淡い色や古典柄など落ち着いた柄が上品で落ち着きのある印象になります。お茶会で着る場合は控え目で上品な柄がよいとされているのです。黒留袖に付いている比翼は付けないことが一般的で付下げとよく似ていますが、付下げは絵羽模様のように模様がつながっていないことが特徴です。付下げの格は訪問着より下になります。シーンによってふさわしくない場合があるので注意したいところです。
色留袖の紋入れ替えや紋消しとは
色留袖の格の違いの中に家紋があるとご説明しましたが、五つ紋は格が高い着物であるために着て行ける場所が限られているので、なかなか使う機会がないというお話もよくあります。そこで疑問に思うのが家紋を入れ替えられるのか、消すことができるのかということですよね。ここでは家紋の入れ替えや紋消しについてお話します。
■紋入れ替え
ご親族から譲り受けたものや実家の家紋から嫁ぎ先の家紋に入れ替える場合があるのです。この場合は紋入れ替えといい、家紋を入れ替える必要があるのです。一度、もとの家紋を専用の薬剤などで洗い新しい紋を入れます。
この技法は家紋がにじんでしまった場合などでも使われることがあります。薬剤で前の家紋を落とすので、生地が弱っている場合などは縫い紋という別布で作られた紋を貼る方法になる場合もあるのです。着物専門のクリーニング店などで取り扱っていることが多く、呉服屋さんなどに相談すると紹介してもらえます。
なお、家紋を嫁ぎ先の紋にするのか実家の家紋を使い続けるのかは嫁いだ地域によって考え変え方が違うため、嫁ぎ先の近くの呉服屋さんかご家族の年長者の方に確認してから決めたほうがよいでしょう。
■紋消し
紋を消すことで格式の高い五つ紋や三つ紋の色留袖を訪問着として幅広いシーンで着られるようになります。方法は紋入れ替えと同じで専門店で専用の薬剤で落とすものです。
留袖は格式が高いことが知られている礼装なだけに、細かい区別が分からないまま着てしまうと場にふさわしくない装いとして大変なマナー違反になってしまいます。そうならないためにも留袖の格やシーンを知って、ふさわしい装いをすることが大切ですね。