着物を汚れから守る半襟とは?
きれいな装飾を施されている着物を着ているとき、一番避けたいのが食べ物や汗そして化粧品類が触れることによる襟元の汚れです。とくに夏用の着物は通気性のよい生地を使って織られているため、汚れが付着すると生地の深くにまで浸透してしまいます。そこで便利なのが長襦袢に縫い付けて使用する「半襟(はんえり)」です。
汚れから守りコントラストを生む半襟
着物を汚れにくくする対策として、生地を厚めに折りたたんで織ることで作るのが半襟です。半襟とは、シャツの襟のように着物の上部に縫い付けて使います。生地を折りたたんでから織るため厚みがあり、着物と首筋の間に厚みを生みます。その首筋の厚みがあることで、食べ物の汚れや化粧そして汗をかいたときに下に滴り落ちるのを受け止めてくれるので、大切な生地を汚さずにすむのです。
半襟は汚れを付けないというのが最大の目的ではあるのですが、もう一つの役割としては生地の色と違う色を装着することで華やかさを際立たせるためにつけます。一枚の服を作るためには一枚の生地を織って作るため、基本的に単一の色になってしまいます。
さまざまな装飾を施しても、着物の生地の色のほうが面積が大きいため、長時間着用していると目が慣れてしまい飽きが生じてしまいます。そこで赤色に白色など別の配色を加えることによって、配色のコントラストを生み出し際立たせることができるのです。
半襟に汚れが付いたらすぐに洗おう
汚れを生地にしみこませないための半襟ですが、その役割のために汚れやすい場所でもあります。基本的に織物なので、汚れを放置すれば生地にしみこんで簡単に取れなくなります。使った後に汚れてしまったときには、できるだけ早めに対処すれば、汚れが落ちやすくなります。
汚れが付いて間もないときには、濡れた布で軽くふき取った後に乾いた布で水気を吸い取り落とします。それでも落ちなかったときには、着物から糸切狭を使って切り離します。風呂桶など深めの容器にぬるま湯を入れて、その中に洗剤を入れて溶かします。
洗剤を溶かした溶液に、切り離した半襟を半日漬け置きをするのです。漬け置きをして汚れがおいていることを確認できたら、ドライヤーの温風を当てて水気を飛ばした後に日陰の風通しの良い場所で乾燥させます。
ただこの方法で取れるのは汗や水分由来の汚れであり、食べ物や化粧品など油由来の汚れは完全には落ちない場合があります。油由来の汚れについては、ベンジンといった有機洗剤を使って落とすことになります。
洗い落とせなかった頑固な汚れはプロに任せます
大切な着物を守る役目のある半襟ですが、何度も使い続けていると汚れが蓄積していきます。汚れが付着してからすぐに対処すれば目立つシミになることは少なく、キレイな状態で長く使えます。
着用する頻度や汚れの度合いによっても違いますが、1年を超えた場合においては紹介した方法では汚れが取れない場合もあります。さらに糸切狭で切り離すといいましたが、再び取り付けるには技術がいるので、慣れていない人が行うと台無しにしてしまう恐れがあるのです。
もし再び取り付けるのに自信がない、もしくは汚れがひどくて素人では手がさせないと判断したときには、迷わずにプロに依頼するのが大事です。プロに依頼する場合の相場としては普通の汚れ程度であれば3,000円から4,000円が相場ですが、頑固にしみこんだ汚れもしくはカビ汚れの場合には5,000円以上になる場合があります。
プロにおまかせするメリットとしては、一般家庭ではできない洗浄方法で大抵の汚れはきれいに落としてくれる点です。ただプロであっても汚れの種類によっては手の施しようがない場合があり、その場合にはプロの目線から落ちないことが伝えられ、落ちる範囲まででよいとするか、買い直すかを判断することになります。
しかし最近では1,000円以下など非常に安価でも、華やかで美しいデザインの半襟も多数登場しています。そのためいくつかの半襟を揃えておき、着物に合わせてコーディネートを楽しむのもよいでしょう。
半襟は着物の汚れから守るだけでなく、別の装飾をしたものを取り付けることによってコントラストを生み華やかさを演出してくれます。ただ本来半襟は着物を汚れから守るために用いるものなので、一回使ったらかなりの汚れが付着してしまいます。そのままにすると落ちにくくなるため、汚れが付いたらすぐに水拭きをして汚れを落としてください。もし汚れが目立ってきたら無理をせず、プロの仕立て屋もしくはクリーニング店に出してきれいにしてもらいましょう。